2019年10月30日。高い山が冬に包まれ始めた頃、涸沢へハイキングに出かけた。

 

昨日、雪が降ったらしい。見上げる山々は一昨日より白くなっている。

 

横尾から涸沢に向かう道。

 

左を見上げるとそびえ立つ屏風岩。

 

ヨセミテ渓谷のハーフドームやエルキャピタンに比べるとちっぽけなこの岩壁も、

 

さらにちっぽけな私に自然の大きさを感じさせるには十分だ。

 

常念岳の方向から登る朝日に照らされ、スラブ面が輝いていた。

 

 

ブナの木が紅葉している。

 

上高地にはほとんどない木だが、ここにはある。

 

独特な形をした歯が黄色と茶色の中間のような色をして、風に吹かれて落ちていた。

 

ブナの葉の絨毯だ。

 

 

本谷の仮橋を渡り、ガレ場を越えて行くと、穂高岳が見えた。

 

なんだか写真で見たヒマラヤの山みたいだ。

 

紅葉が終わったこの時期の涸沢は静かで良い。

 

華やかな夏の山よりも、人を寄せ付けない冬の山が好きだ。

 

静かで、厳かで、これが本来の姿なのだろう。

 

 

涸沢も雪はなかった。

 

ザイテングラードの取り付きより少し下から雪がついているように見える。

 

今日はここまで。ここから上に登るための装備は持ってきていない。

 

あくまでも涸沢へのハイキングなのだ。

 

見上げる穂高岳は新雪をまとい、荘厳。気高く、重々しい。

 

 

涸沢からの帰り道、風の音に耳を澄ませて歩いた。

 

風が耳に当たって「サー」とも「ゴー」とも聞こえる音を立てる。

 

気持ちが良い風が吹き抜ける秋の登山道。

 

ここが雪に閉ざされ、装備と技量がある人しか入れなくなるまでもう少ししか時間がない。

 

それまで、秋のかけらを一つ一つ探し当て、丁寧に拾っていきたい。