
バスの終点から、
太鼓橋を目指す道のりは小さな商業集落で、
食堂が数件、その他には草餅屋、酒屋、彫刻屋、喫茶店などがひっそりと連なる。
道も建物も昔からある佇まいで、
まるで昭和の昔にタイムスリップしたかのよう。
バス停すぐそばの食堂は数件連続してカーテンが閉じられていて、、、
やっぱり冬は訪れる人が少ないのだろう…。
その細い道筋を進んだ先、
「橋本屋」という旅館の看板が見えたところが太鼓橋の入り口だった。
ここがあの橋本屋かと。。。
下の写真右が橋本屋の一部。

この日は休業なのか、
カーテンが閉められており、、、
歓迎の看板にも今日の宿泊者は掲載なし。
この橋本屋、
かの土門拳が雪の室生寺を撮影するたにめに宿泊した常宿。
それは今から約40年前の1978年2月の話。
その頃土門拳は車椅子生活で、
もはや雪を諦めて帰ろうとしたその朝、
なんと、室生寺に雪が降ったという。
執念なのか必然なのか、
ただ、そのおかげで写真集女人高野を世で見ることが出来たのは幸せなこと。
はじめて室生寺を訪れて40年目のことだったそうです。
このエピソードを聞くと、
どれ程待ち望んだことかと、
どれ程震える手で撮影したものかと、
様々と想像が膨らむ。
雪のしらせの朝、
土門拳は橋本屋女将の手を握って泣いたそうです。
そして従業員も皆泣いたんだそう。
そんな念願の雪だったんですね。
実はこの日の数日前、
西日本への大寒波でこの室生にも雪が降ったらしく。
その残雪だけでも、、、
と願ったものの、
雪は室生寺の奥の院に続く石段にわずかに見えただけ。
・・・はじめて来て、
そんな待ち焦がれの雪に出会ったら、、、土門拳に失礼だ・・・
と、思い直したこの日の次第。
楽しみはまたにとっておきます(^^)。

ここから太鼓橋を渡り、
室生川のほとり参道に立つ「三宝杉」と呼ばれる三本の大杉を通り参拝受付へ。
そして、
室生寺入口の仁王門へと向かいます。
「ぼくの待っていた雪はさーっと一掃け、掃いたような春の雪だった」
~「女人高野室生寺」あとがきより
偉大な写真家は、
素敵な詩人でもありました。
end