今の翻訳は、旧来の人間翻訳に加え、機械翻訳、AI翻訳、CATの四つがあります。機械翻訳とAI翻訳は、プログラムの複雑さが違うだけで、実質的には、同じものです。CATというのは、翻訳メモリーというものを使って、人間翻訳を効率化したものです。前に自分が翻訳したものを使いまわして、時間を節約するというものです。
どう違うか素人のみなさんには、わかりづらいと思います。翻訳会社は、これをわかりやすく説明しているように見えることがありますが、翻訳会社のスタッフというのは、実は、外国語がわからない人たちなので、宣伝のために、適当なことを言っているだけというのが本当のところです。
機械翻訳やそこから進化したAI翻訳ですが、私が試してみたところ、全然だめですね。言葉のニュアンスが全く伝わってこないので、これで著者が言おうとしていることを判断するのは不可能です。
また、機械翻訳やAI翻訳の場合、たまに完全に間違った翻訳をしている場合もあります。また、訳せない場合は、訳が出力されないので、訳が抜けてしまうこともあります。だから、機械翻訳やAI翻訳の場合は、後から編集作業をしないと、恐ろしいことになりかねません。翻訳業界では、これをポストエディットと呼んでいます。
CATの場合は、人間が翻訳したものを再利用するシステムなので、もし完璧な翻訳ができる翻訳者なら、完全に間違った翻訳をする可能性はないと言えます。しかし、別の文脈で使った訳文を再利用するため、全体として、木に竹を接(つ)いだような変な文章になります。そうなると、とても読みにくい文章になってしまいます。これも後で編集(ポストエディット)をしないと、まずいでしょう。
さて、少し考えれば、問題は、ポストエディットの質によるということがわかると思います。ところが、機械翻訳やAI翻訳のポストエディットをやる人の賃金はとても低いです。たぶんコンビニのバイトぐらいの賃金しか稼げません。下手をすると、それ以下です。CATの場合は、それより少しはましかもしれませんが、やはりコンビニのバイトレベルの低賃金になります。
なぜそうなるかというと、こういう翻訳の仕方をさせるのは、機械を使って無料で翻訳するのに対抗して、賃金を最低限に抑えようとしているからです。競争相手が、ポストエディットなしの機械翻訳やAI翻訳というわけです。これとの競争で生まれた職域だから、最低賃金かそれ以下になってしまいます。
優秀な翻訳家を最低賃金で働かせることができるのなら、お客さんとしては、経費節約になってうれしい限りでしょう。しかし、よく考えてみて下さい。どこの世界に英語ができるのに、最低賃金で働こうとする人がいるでしょうか?
そういうわけで、機械翻訳やAI翻訳のポストエディットをやったり、CATで翻訳をしている人たちは、あまり英語のできない人たちです。たぶん、英検2級ぐらいの人たちだろうと思います。それ以上のレベルの人たちは、翻訳業界から離れて、別の英語関係の職業に就くはずです。もちろん、最低賃金よりももうかればいいので、英語関係以外の職業に就く人もいるでしょう。
結局、機械翻訳やAI翻訳のポストエディットとか、CATなら、格安の翻訳を提供してくれるでしょうが、値段相応にしかなりません。機械翻訳やAI翻訳やCATで一字10円で翻訳してもらったら、一字50円の人間翻訳と同等のものではなく、人間翻訳で一字10円相当の翻訳と大差がなくなるわけです。
一字10円で英語を書くような人の場合、書いた英語はほとんど意味不明で、「よくこんなのでお金が取れますね。」と言いたくなるようなものになります。
だって、そういう賃金で働く人がやる翻訳なので、仕方ないでしょう?翻訳会社が大きいとか小さいとかは、翻訳の質と関係がありません。むしろ、大手は、大多数が安い翻訳を求め、かつ、翻訳の質が判断できない層を相手にしているので、レベルの低い自称翻訳者のような人たちばかりが翻訳の仕事をしている可能性がとても高いです。
優秀な翻訳者に一字5円や10円を提示したら、すぐに辞めますからね。