今日はまた少し新しい世界に出会った。
1年のうち、1ヶ月しか陸上にいない人。
遠洋まぐろ漁業の漁師さん。
シェアハウスの歓迎会で会って、これは話を聞かないと一生後悔すると思って、質問ぜめにしました。
「船に乗って海上にいるとき、どんなことを考えているんですか」
今までされた質問で一番難しいと言われた。
そしてどうやらこれは、的外れな質問だったらしい。というのも、彼らにとっては海の上が日常。
だから私たちにとって、普段何を考えているの?と言われるようなもの。
「船上ではどんな生活をしているんですか。私たちが持っている、遠洋漁業は辛い、というイメージは実際どうですか」
まず船の上では、今何時、って言う概念は必要ないんだって。ただ必要な時に仕事をしているだけだから。
一日17時間仕事をすることもあるみたい。
漁業の3Kは、「きつい、汚い、危険」
最初の方は、仕事して、死んだように眠るだけ。
電話は30分6000円のカードがあって、6万円分くらい買っても最後の方にはなくなっちゃうみたい。
船の上には新聞がとどいて(実物を見せてもらった!)、ネットもないからそれが唯一の情報網。
ただしそれも、電波が悪いとうまく受信できなくて、文字がザーってなって印刷されちゃうこともあるみたい。
ストレスのはけ口をうまく見つけられないと、精神的に病んでしまう人もいるんだって。でも帰れない。
その人は、乃木坂のDVDを見るのを楽しみにしてたって。(ただし面白いのは、新曲が出たとか、メンバーが抜けたとか、わかるのが1年後に帰って来た時だということ笑 乃木坂は可愛いから、船中のインドネシア人にも人気なんだって)
「どうして今の仕事を続けているんですか」
今の遠洋漁業の問題は、どの漁業もそうだけど、若者が減っていること。インドネシア人をたくさんのせて遠洋漁業を行ってるとはいえ、法律的に、免許を持った日本人が一つの船に6人は乗らないといけないらしくて、でも人が足りなくて、今それをごまかしている船がほとんどなんだとか。高齢化が進んでる今、そして若者で遠洋漁業の担い手になる人が少ない今、日本から遠洋漁業が消える日も遠くはないって。
そういう理由もあれば、その人の個人的な理由も。
「遠洋漁業って、普通じゃない。人生の大半を旅しているようなものだし、自分にしか見られない世界でもある。そういう意味で、かっこいい仕事だと思っているから、続けてる。
あとは、海も、船も、魚も好き。きついのはそのうち慣れる。趣味を仕事にしているようなものだよ。
趣味は仕事にしちゃダメっていう人いるけど、あれ嘘だと思うな。好きなことをやるのが一番だよ。」
じーん。
「私ばっかり話を聞いてしまったんですけど、何か私に質問ってありますか」
「質問は特にないけど。
...
東大って、そんなにすごいの?」
…
わたしは、大学をはかる指標が誰かの決めた統一的なものに過ぎないこと、一人一人の人間性を見ているわけではないこと、だからすごいかと言われたらわからない、と答えた。
「そうだよね、アメリカの大学とかは、個性を見てる。秀でてアピールできるポイントがあれば、評価される。だけど日本の教育は違う。あくまで学力が平均以下の人は切り捨てられる学歴社会になってるよね。これは、子供たちの個性を無駄にしてしまってると思うな」
そうだなあ、と思い、頭が上がらなかった。
平均以上勉強ができる「学力」をすごいと評価する社会だからこそ、そこに個性はなくって、自分って何がすごいんだろう、と思った時に、あれ、何もない、自分ってなんなんだろう、って思う人が一定数いるんじゃないか。
逆に、学力以外の指標で自分をはかった時に、果たしてどれだけ評価してもらえるんだろうか、私に残ってアピールできるものはなんなんだろう、と思ってしまった。
一人のわたしとして、どんな人間的価値を他の人に見出してもらうのか、ここでもちょっとずつ、見えてきた気がして、そういう「好きな自分のあり方」で、地方であっても海外であっても誰の前でも、振る舞えたらいいなと思う。
良い出会いでした。
P.S.
一つ自分に問いかけないといけないこと。
「視野を広げたい」ってみんな言うセリフだし私も思ってると思ってるけど、なんでだろう。視野を広げた先に何があるんだろう。何を求めてるんだろう、表面的な言葉をgoodとしたくないし、もしこれ、良いもの神話に流されて行動しているだけだとしたら、今すぐやめたい。


