夜、帰宅するなり夫が

小さな箱をこそこそと取り出して

娘と何か話していた。


「お母さんにはこれがいいと思って」

「そうだね、あぁまずはお母さんに見せなよ」


小さな白い箱には

これまた小さなダイヤモンドがついた

ネックレスが入っていた。




勤め先で

お安くなっていたとのこと。

娘達にもネックレス。

息子には時計、自分には眼鏡を

買っていた。


小さなダイヤとは言え

お求めやすいお値段になってるとは言え

イミテーションではない。

本物だ。

こんなこともあるのか、と

びっくりした。


素直に嬉しい。

本物のダイヤモンド。


そこへ、夫が

「大丈夫か?」と

アップルパイを差し出してくれた。



アップルパイは

私が子供の頃、母が

1番作ってくれた我が家の

定番お菓子だった。


だから

私にとってアップルパイは

思い出の味だ。

思い入れの深いものがある。


そんなアップルパイを

夫が買ってきてくれた。

自分の夕食用のご飯と一緒に

私を思って選んできてくれたんだ、と

わかった。



その日の昼に

私は病院に行き

ここ数年抱え続けていた痛みの

正体を医師から聞かされた。


一回につき歩くのは30分にしてください。

重いものを持たないように。

杖をついて歩いてください。

今はまだすぐ手術ではないですが

いずれこうなるでしょう……


症状について書かれたリーフレットと

手術についての手引き書を渡されて

軽くパニックになった。


こちとら

筋肉痛か、老化による筋肉硬化

骨格の歪みから

痛みが出てるんだろう、ぐらいにしか

思ってなかったのだ。


手術が必要だって?????

一回につき30分なんて

ほとんど歩けないじゃん。

ワンコの散歩、もっとしたい。

家族で旅行に行きたいねと

話してたよ。


命にかかわる病ではないけど

行動制限をかけないと

この痛みは

軽くならない。



さすがに、ひょえぇぇえ、と

涙がちょちょきれたのだ。

痛いのは勘弁してくれ。



家族LINEで

コレコレこう診断された、と

送った。

もっと散歩に行きたかった。

行けなくてごめんね、と。

こんなに早くガタがきてるとは

思いもしなかった。

みんなに迷惑かけると思うけど

よろしくね。



大丈夫か、という

言葉を添えられたアップルパイは

涙で滲みそうになった。


お腹すいてるだろうに

自分のご飯確保して

すぐ帰りたいだろうに

わざわざ私の大好きなアップルパイを

探して買ってきてくれたんだ。


ダイヤモンドも嬉しかったけど

それよりもっとお安かったと思う

アップルパイも、とてもとても

嬉しかった。



当分病院に通ってリハビリに

励む。

進行が少しでも遅くなり

この体を少しでも良い状態に

保てるように

やれることはまだある。


お薬などに頼りつつ

リハビリがんばって

今より痛みがひいたら。




もらったダイヤのネックレスをして

お洒落して

デートしようね。笑