相談者のK君父子は怒り心頭だった・・・!
『なぜいきなり銀行はそんなことを言うのか!』
『減額はしてもらったが、きちんと払っている!これでは死ね!と言ってるようなものだ!』
私も長い間この仕事をしてきて、似たようなケースはあった・・・!
しかしそれは債務者が完全に破綻している状況の時である
今回のケースは債務者は破綻もしていないし、少しではあるが業績も上がりつつあった!
なのに銀行は人が変わったように、矢のような催促をするのであった・・・!
当時の金融機関は不良債権処理を加速しつつあった・・・
ようするに通常返済額を減額した案件は、一律不良債権とみなされ
一気に処理しようとしていたのだ!
そのやり方は血も涙もなかった・・・
銀行は早期に処理することしか頭に無く、一切の交渉も同情の余地もなく
K君父子の会社がどうなろうと関係ないといった態度だった・・・
私は悩んだ末、二つの提案をした・・・
一つは金融庁に告発して銀行の内部調査をしてもらい、今回の要求は不当だと訴えること
しかしこれは賭けでもある
不良債権処理を加速させているのは当時の国の政策でもあり、事実上返済額を
減額しているのは債務者であるからだ・・・!
金融庁に訴えをどこまで認めてもらえるかは、私としても未知数でもあった・・・
それに時間的な問題もある
銀行は明日にでも競売の申し立てを裁判所にしようとしていたからだ・・・
私はもう一つの提案をした・・・
それは任意整理という方法だった・・・
競売にかけられると大体が相場価格より低く落札される・・・
銀行は落札金額をもって回収し、債務金額を相殺する
であるならば競売ではなく、少しでも高く売れる任意売買をやり
少しでも債務金額を減らすというやり方だ・・・!
だがしかし、問題があった・・・
工場をどうするかだった・・・
工場が人手に渡ると仕事が出来なくなる可能性がある
まだ体力のある工場を辞めてしまえば、それこそ死活問題である・・・
だが銀行は工場も売れ!と引かない・・・
父子は『一度、家族会議をしてみます』と言った・・・
私は『わかりました。私も良い案を考えてみます』と言い
再度会う約束をしてその場を後にするのだった・・・
私はなんともやり切れない思いの中、帰社するのだった・・・
どうして潰れなくて良い人を銀行は潰すのか・・・!
もちろん経済の法則を否定するわけではない・・・
しかし頑張って返済している人を、なぜこうも簡単に平気で潰せるのか・・・!
私にはまったく理解できなかった・・・
なんとしてもこの父子を助けてあげたい・・・
実は私には他人事には思えない苦い教訓があった・・・
私が20歳のころ、私の父親が同じような憂き目に遭ったとき
まったく無知だった私は、父に何にもしてあげることができなかったのだ・・・
今の私ならどのようにでも出来たことだが、当時の私には知恵も知識も力もなく
ただ傍観するしかなかったのだ・・・
だから私にはこのような問題は、ことさら胸が痛む・・・・
しかしそれと同時に、私の心の底からはメラメラと闘志も燃え盛ってくるのだ!
数日後、父子から連絡が入った・・・!
『家族会議の結論がでました・・今から会社に寄せてもらいます』
その声は、心なしか元気がないようだった・・・・・