主婦から“平和な”転職できますか?

Season1 ~主婦をスカウトしたはずが、俺がスカウトされていた~


wW-01 I want to go home


「さてと…」


電気を消す。


扉を、

静かに閉めた。


帰ろう。

広報委員の居残り…か。

まるで、私も小学生?


真彩

「フフッ…」


階段を下る。


――ブワッ!


踊り場の、

窓から突風。


思わず背ける。


一つの人影。

窓に…居る。


男が、

降り立った。


足音がしない。

でも…来る!


見てる。

私を…。

近い…。


ち…近い!!


「止めてくれ」


周囲を見渡す。

自分を指さす。


…頷かれた。


「時間がない」


突然、

手を握られた。


形が現れる。


手の中に、

――日本刀。


真彩

「……は?」


青ざめる。


「これで、俺を!」


真彩

「は?!…んっ」


口を、

塞がれた。


「安全は保証する。頼む」


気が、

遠くなる。


ここは…どこ?


わからない。


ゆっくり、

刀を、

前へ構える。


何を、

やってるの?


男は、

静に離れてく。


震える手。


刀から、

手を離そうとした。


――次の瞬間。


激しい衝撃。


頬が、

熱くなる。


謎の男に、

抱擁されている。


背から、

刃が光る。


真彩

「…なおき」


階段下に、

息子の残像。


熱い。

腹部が熱い。


――滴る。


残像へ、

手を伸ばす。


「処理班、一分で終わらせろ」


男の、

一言を最後に。

音もなく。

空気さえも。


――消えた


---

A few hours later.

---


白ポツ天井。

学校?

違う。


ポッポッポ…

規則的に鳴る音。


瞬きをする。

視界に黒い影。


目が、

悪いんだった…


“大地”かな?


真彩

「……っ…」


声が、

出ない。


体も、

動かない。


痛い。

腹部が痛い。


顔を、

歪ませる。


パッと、

視界がクリアになる。


目の前に男。

――『安全は保証する。頼む』


あ…。

………。

誰だよお前。


ん?

何で見えるんだ?

乱視あるし、視力最悪なのに…。


「……全部聞こえてるぞ」


…………。

は??


帰りたい。

帰りたい。

帰りたい。


どうだっ!


「無理な願いだな…」

続けて言う。

「家族の安全なら保証する」


眉を引きつらせた。


お前何者?

てか、ここどこ?


「お前には関係ない。ここは病院だ」


淡々と答える。


「また来る。大人しく寝てろ」


去って行った。


………。

……。

はあ?!?



――スルッ


拘束が、

ほどけた。


動ける。


そっと、

素足で床を歩く。


扉越しから声。


思わず、

不快な顔。


窓の外を見てみた。

二階の様子。


静に、

窓を開けた。


そよ風が、

髪を撫でる。


下を覗き。

唾を飲む。


扉へ、

視線を再び向ける。


――決意した。


窓の縁、

身を乗り上げる。


外の壁。

素足で支える。


不思議…

体がすごく軽い。


縁から縁へ、

飛び移る。


まるで、

アサシンだ。


地面に、

音もなく着地。


ふと気づく、

腹部が痛くない。


まぁいいか…


木陰に、

身を潜める。

周囲を確かめる。


人が、

警備が、

居ない。


迷いなく、

敷地内から脱出。


無意識に、

首の後ろを掻いていた。


走る。

裸足で走る。


病院服。

手首の入院バンド。

明らかに異様。


周囲の、

視線が痛い…


異常だ、

すべてが…


器用に、

人を、

避けて走る。


いま、 

何日で何時?


【20xx年5月25日午後3時12分です。】


………。


くそっ…。


あの子に、

鍵持たせててよかった。


【直樹さんは現在、リビングでソーラン節を踊っています。】


………。


足を止めた。

声を殺して笑う。


【通信あり】


………。


意味わかんない。

頭がうるさい。


真彩

「ちっ…」


険しい表情。


……帰る。

ぜってー帰る!

待ってろ直樹!


まるで、

近未来か、

目の前にUI地図。

 

導く。

ルート案内。


それに混ざる。


――赤い点滅。


…なにこれ。


一つ、

ちいさな赤い点。


こっちに来る。


近い!

…後ろ?


もう一つ。

…前から!?


身構える。

姿は視えない。


真彩

「…くっ……」


謎の声

『新入り…』


脳内に響く。


振り向かない。


謎の声

『歓迎す……るっ!』


瞬発的に、

脚を受け止める。


前方、

拳がとんでくる。


ギリ避けた。

脚を前方に投げ飛ばす。


見事にヒット。

二人ダウン。


『無視とはいい度胸だな』


あいつか…。


『帰すとは言っていない』


邪魔するな…。

私は帰る。


『そうか…』


それ以上、

何も言ってこない。


【直樹さん抹消対象リストに入りました。】


真彩

「…っ……」


卑怯だ。


真彩

「おい!!抹消対象ふざけんな!!」


返答がない。


【通信妨害確認】


は?


背筋が、

ゾクッとした。


UIルートの先に、

紫が混ざる。


静に、

近づいてくる。


赤い点。


円を、

描くように囲む。


視えない。

でも、温い。


紫が迫る。

怖い…。


逃げようと、動く。


ぶつかる。

視線を感じた。


真彩

「人?」


『動くな』

『守る』

『心配するな』


真彩

「え…」


脳内に流れる声。

温かい。


紫の点。

高速で迫る。


――ドンッ!


銃声?


髪を乱す風。


――ズサッン! 


…ドサッ


紫の点が

一斉に動き出す。


『数で押してくる様だ』

『守り切るぞ』


何が…。

何が…起きてるの?


『逃げ出すからだろ』


あ…。


振り返った。


男を、

睨見つける。


無表情で見てくる。


有無なしに、

抱き抱えられた。


真彩

「うわっ!」


また、

音もなく、

姿を消した。


景色が歪む。


場所が、

変わった。


施設だろうか。


男は、

そのまま歩き出す。


降ろさ…

ないのかい!


真彩

「離せ!」


「…黙れ」


暴れてみた。


男の、

背中に平手打ち。


真彩

「ひぃ!」

「…ぅ」

「……」

「あの…恥ずい…」

ぽつり。


男は、

立ち止まった。


ゆっくり、

降ろされた。


「…満足か?」


真彩

「触っただろ」


「……」


じとー


視線を、

逸らされた。


置いて行かれた。


【抹消対象解除】


……。


「…付いて来い」


真彩

「帰る!」


ため息。

振り向く。


「お前な……」


呆れた顔してる。


「ラファルサ、相変わらずだな」


ラファルサ(男)

「大佐!」


敬礼してる。


………大佐?

首を傾げる。


近づいてくる。


大佐

「貴婦人、怖い思いさせてすまなかった」


優しい表情。


大佐

「不安だろう。婦人殿の疑問をゆっくり聞かせてくれるかい?」


手を、

差し出された。


信じていいのか…

見つめながら、

不信感。


【好感度感知∶南戸大佐。56歳独身。敵意なし。仲良くなりたい。】


……。


何それ…。

てか、

お前なんなんだよ。


【あなたを全力でサポートします。】


だから…。

何なんだよ…。


南戸大佐

「混乱してるんだろうな…無理もない」


手を、

引っ込める。


南戸大佐

「ラファルサ…」


ラファルサへ

振り向く。


南戸大佐

「その不器用、いい加減直せ…私はA6ブロックで待ってる」


彼の、

背中を叩き去った。


また、

敬礼した。


ラファルサ

「はっ!」


大佐を見送る。


へぇ、

見送るんだ…。


スッと、

彼は、

こちらへ、

振り向いた。


じー…。


腹立つ…。

視線を外した。


肩を、

すくめ、

呆れてみせた。


チラッ


あ…。

片眉上げてる。


【好感度感知∶ラファルサ少佐。敵意なし。仲良くできる気がしない。】


真彩

「知るか…」


ラファルサ

「…ちっ」


背を向け、

歩き出した。


真彩は、

その場から、動かない。


ほう…。

舌打ちかよ。


こいつ、

幽霊か?


ホント、

足音ないよな。


真彩

「……」


黙って、

横目で見た。


真彩

「……」


ラファルサと、

反対方向へ、

猛ダッシュ。


目の前にT字路。

迷ってる場合ではない。


半開きの部屋。

駆け込む。


扉を、

閉める。


暗い。


電気って、

どうつけんだ?


【敵意を検知】


真彩

「……」

「…っ…」


背後に、

何かいる。


誰か

『動くな。喋るな。』


両手を挙げる。


真彩

『抵抗しません』


誰か

『言ったな』


真彩

「……っ!?」


羽交い締めにされた。


絞まる。

苦しくは…ない。


耳元で、

囁かれた。


誰か

「女だ…」


舐められる。


背筋が、

ゾクッゾクッ。

反吐が出る。


真彩

「やめ…」


指が鳴った。


――パチンッ


電気が付く。


目の前には……。

げんなり。


…ああ。

ラファルサね。


誰か

「ちっ…」


真彩

「うわっ!」


突き放される。

舌打ちしたいのこっちだが…


まぁ…

顔拝んでおこう。


レロレロ男と視線が合う。


真彩

「うわっ最悪」

思わず拭く。

「お前!耳舐めただろ!…キモッ!」


レロレロ男

「うるせぇ!!ババアに興味ねーわ!」


真彩

「あっそ…」


そんな、

やり取りを、

黙って見てるラファルサ。

静かに睨む。


視線を追った。

あ…

レロレロ男か…。


突然叫ぶ。


レロレロ男

「はあ?!そんな…酷い。酷いですよ少佐!」


膝から、

崩れ落ちてく。


ラファルサ

「追加してもいいが…」

覗き込む。

「…どうする…生きて帰れると思うか?」


あいつ部下か?

……ぷっ。

全力で首を振っている。

ウケんだけど…。


ラファルサって、

ため息多いよな…。

鬱陶しい。


ギョロっと、

視線が合った。

ダル…。


ラファルサ

『見届けててもよかったがな』

ウザ…。


腹立つ。

助けてもらったけど…。

憎たらしい……。


――私もお前と仲良くなれる気がしない。


ラファルサ

「ふっ…」


鼻で、

笑われた。


ラファルサは、

扉を開けた。

が、動かない。


通れと…。

レディーファーストってか…。

うわ…。


嫌々、

先に部屋を出た。


猛ダッシュ。


ラファルサ

『テメー!』


追いかけてくる。

そりゃそうか!


クソおもろ!


随分と、

走っている。


なのに、

息が、

上がらない。


やべっ…。


本気で、

走っているのに。


ラファルサが、

手を、

伸ばせば、

届くレベルの距離だ。


もっと速く!


【加速します】


真彩

「え!!」

「うおーー!!」


「止まりなさい!!」


前方から罵声。


あ…。

南戸大佐。


素直に、

急ブレーキ。


ラファルサ

「…っ!!お前!!」


真彩

「え……?」


次の瞬間。


――ズゥーン…


え……。


“ラファルサ少佐、宙に浮く”


南戸大佐

「まったく、少佐が何をやっている!!」


――バアアアーン!!


あいつ…。

吹き飛んだ。


物凄く。

ものすごーく。

遠くーに。

吹っ飛んだ。


その、

光景を、

目にして、

全身から変な汗。


そっと…、

大佐を見上げた。


わ…、

笑ってる。


目は…、

笑っていない。


私を、

見つめて…る。


ぎこちなく…、

微笑み返しといた。


真彩

「あ…はは…スミマセン」


頭を下げた。

深々と…。


大佐の顔。

こえー……。


視界に、

少佐の足…。

ゆっくりと見上げる。


「……ぶっ!」


思わず、

吹き出す。


ボロッボロ!


ラファルサ

『誰のせいだと思ってる!!』


流石に、

無理があるか


真彩

「すみませんでした」


ラファルサ

『謝って済むなら、戦争は…』


南戸大佐

「ラファルサ少佐!」


ラファルサ

「はい!」


背筋をビシッ。


少佐へ視線…。

気になる。


ラファルサ

『何だっ!』


別に…。


顔が、

引き攣る少佐。


やっぱおもろ!

ん?


視界が。

一瞬歪んだ。


【Ping接続低下。】


真彩

「……」

「ぴんぐって?」


【接続遮断します。】


意識が、

途切れた。


――ドサッ!


ラファルサ

「おい!!」


南戸大佐

「しっかり!!」


ラファルサ

「救護班、至急……」


【生命維持低下。】

...

...

...

...

【応答なし。】

...

Power supply......100%.

System load......0%.

...

1...20.......30...100%.

...

Loading.......


大きく呼吸。


【おはようございます。マヤ下級兵殿】


………。

すげー数。

いや…

何人いるんだよ。


【13人です。】


………。


ラファルサ

「大丈夫か?」


救護班

「システム安定しています。大丈夫かと…」


ラファルサ

「………」


ラファルサ

『大丈夫か?』


真彩

『何があったのかさっぱり』


ラファルサ

『知らない方がいい。今は……』


濁らすんかい!


起き上がる。

視線が追う。


真彩

「……何?」


救護班

「無理しないでください」


真彩

「何のこと?」


救護班

「いえ……」


お前もかい!

ため息。


真彩

「帰る…」


ラファルサ

「ダメだ!」


真彩

「帰るっ!!」


ラファルサ

「死にたいのか!!」


真彩

「家に帰る!!!!」


とうとう叫ぶ。


救護班

「彼女を止めろ!!」


真彩は、

音もなく、

姿を消した。