●国連報告者が安倍首相に「共謀罪は人権に有害」の警告文書!
「国際組織犯罪防止条約のため」の嘘も明らかに

リテラ /
2017年5月23日 12時11分

 きょう23日午後にも衆院本会議で強行採決される見通しの「共謀罪」法案。

その後、参院での審議にはいるが、

政府・与党は数の力で押し切り、

この戦後

最悪の

言論弾圧法案を、

会期中の成立に持ち込む目算だ。

 そんななか、ついに
国際社会からも、

日本の共謀罪法案とこれを強行する

安倍政権に対する

強い懸念が出され始めた。

 5月18日付で、
国連の特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏(マルタ大学教授)が、

(朝日新聞では「カナタチ氏」と書いてある。
byロクハン)


共謀罪法案について

「プライバシーや表現の自由を

不当に制約する恐れがある」

と指摘する書簡を、直接、

安倍首相宛てに送付したのである。

ケナタッチ氏は、

マルタ出身のIT法の専門家。

一昨年より国連人権理事会により

プライバシー権に関する特別報告者に任命されている。

 国連の特別報告者が、

直々に日本の首相へ書簡を送った意味は

非常に重い。

というのも、

安倍首相は

「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ、東京五輪を開催できない」

などと言って、

共謀罪の理由を国連条約締結のために必須であると説明してきたが、

これが真っ赤な

ウソであることが、

他ならぬ国連特別報告者に暴露されたからだ。

 書簡は国連のホームページで公開されている。

タイトルは

"Mandate of the Special Rapporteur on the right to privacy"
(プライバシー権に関する特別報告者の命令)。

ケナタッチ氏は

〈人権理事会の決議28/16に従い、プライバシー権の特別報告者の権限において〉

この書簡を安倍首相に送るとして、

英語でこのように書いている。

〈いわゆる「共謀罪」法案は、

その広範な適用範囲がゆえに、

もし採決されて法律となれば、

プライバシーに関わる

諸権利と表現の自由の

不当な制限に

つながる可能性がある〉

〈同法案は、国内法を
「越境的組織犯罪に関する国連条約」に適合させ、テロとの戦いに努める国際社会を支える目的で提出されたという。

だが、

この追加立法の適切性と必要性について

数々の疑問がある。

 政府は、この新法案によって捜査対象となるのが

「テロ集団を含む組織的犯罪集団」との現実的関与が予期される犯罪に限定されると主張している。

だが、何が

「組織的犯罪集団」に

当たるかの

定義は漠然で、

明白にテロ組織に

限定されているわけではない〉


●国連特別報告者が
「恣意的に適用される危険性」に深刻な懸念

 すでに国内の専門家からは、

共謀罪がテロ対策等の国際条約の批准条件ではない

という事実が指摘されていたが、

国連の特別報告者も

その安倍政権の

欺瞞を冷静に指摘しているのだ。

 書簡では、ほかにも

この共謀罪に対する懸念・疑問点が

極めて論理的に示されている。

たとえば、共謀の対象となる277種の犯罪のうち、

森林法や文化保護法、
著作権法など

〈組織犯罪やテロと

まったく無関係で

あるようにしか見えない〉

法律についても

共謀罪が適用されてしまうこと。

捜査のなかで犯罪立証のため、

起訴前の監視の

激化が予想されること。

そして、

〈「組織的犯罪集団」の定義における

漠然性が、

たとえば国益に反するとみなされた

NGOへの監視を合法化する

機会を生み出すと主張されている〉

とも踏み込んでいる。

 つまり、共謀罪が政府の

恣意的運用による

一般市民への

不当な監視活動を

正当化すると、

国連の特別報告者も

認めているのだ。

ケナタッチ氏は、

共謀罪が導く

看過できない

人権侵害を

強く憂慮している。

〈提案された法案は、

広範に適用されうることから、

他の法律と組み合わせることで、

プラバシー権やその他基本的な

人々の自由権の行使に

影響を及ぼすという

深刻な懸念が示されている。

とくに、私が懸念しているのは、

この立法において何を

「計画」や「準備行為」とするのかという定義が

漠然であり、

そして(法案の)別表に
テロ及び組織犯罪とは

明白に無関係な

広範すぎる犯罪が含まれていることから、

恣意的に適用される危険性である〉

〈法的明確性の原則は、

法律のなかにおいて、

刑事責任が明確で緻密な規定によって限定されねばならないと求めており、

不当な禁止行為の範囲拡大なしに、

どのような行為がその法律の

範疇であるかを合理的にわかるよう保証する。

現在の「共謀罪法案」は、

漠然で主観的な概念が

極めて広範に解釈される可能性があり、

法的不確定性を

招くことから、

この原則に一致しているようには

見えない〉

〈プライバシー権は、

この法律が広範に適用されうることによって

とりわけ影響を被るように見える。

さらに懸念されるのは、

法案成立のために立法過程や手順が

拙速になっているとの指摘から、

人権に有害な影響を与える可能性だ。

この極めて重要な問題について、

より広い公共的議論が

不当に制限されている〉


●官邸は国連を批判、
まるでリットン調査団を拒否した戦前日本

 こうした指摘は極めて重要だろう。

国民のプライバシー権や思想の自由などが

この法案で否定され、

憲法が保障するはずの

「通信の秘密」も

骨抜きになるのはもちろん、

周知のとおり、

共謀罪の審議過程では、

担当大臣の金田勝年法相が

答弁不能の醜態を

なんどもさらけだし、

政府も説明を二点三転した。

それは、逆説的に法案の目的から対象までが

時の権力の

解釈次第で

なんでもありになるという、

おおよそ近代法とは

思えない

欠陥法案であること

意味しているが、

一方で、こうして政府が説明責任を

放棄したことにより、

国民にこの法案の意味するところが

伝わらず、

国連特別報告者が指摘する

「より広い公共的議論」は

皆無だった。

 逆に言えば、安倍政権がここまで成立を

急くのは、

「国民が共謀罪の危険性を

よくわかっていない

うちに通してしまおう」

という

魂胆があるからに

他ならない。

あまりに

国民軽視としか

言いようがないが、

しかもこの悪法によって

制限される国民の

諸権利は、

成立後には

二度と戻ってこない

という悪夢のような状況にある。

何度でもいうが、

国連の懸念は、

この安倍政権のやり方が

国際社会から見ても

いかに異常であるかを

証明するものなのだ。

 ところが安倍政権は、

この国連特別連報告者から送られた書簡さえも、

まったく聞く耳を持たず、

撥ね付けるつもりらしい。

菅義偉官房長官は昨日の会見で、

書簡について

「不適切なものであり、強く抗議を行っている」

「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した」

などと

うそぶき、

国連との

"徹底抗戦"の構えまで

みせた。

 するとケナタッチ氏は、

今日の東京新聞朝刊で

菅官房長官に

猛反論。

同紙の取材に対し、

日本政府の対応を

「中身のないただの怒り」

と鋭く批判した。

ケナタッチ氏によれば、

菅官房長官の言う「強い抗議」は19日午後にあったが、

それはたったの約1ページ余りの文書にすぎず、

「プライバシーや

他の欠陥など、

私が多々挙げた懸念に

一つも言及がなかった」

という。

つまり、安倍政権は

完全に説明を放棄し、

国連にまで矛を向けているのだ。

 ネットでは安倍政権のこうした姿勢に

「まるでリットン調査団の報告書を拒否して、

国際連盟を脱退した戦前の日本」

などというツッコミもされているが、

このままでは、この

「平成の治安維持法」が

強行されてしまうだけでなく、

日本が

国際社会から孤立してしまうのは

火を見るより明らかだろう。

 安倍首相は21日の北朝鮮によるミサイル発射実験に対して

「世界に対する挑戦」と凄んだ。

しかし、国際社会の懸念を無視し、

暴走を続けているのは

安倍政権も

同じだ。

共謀罪を廃案にするため、

最後まで徹底して反対の声を上げ続けるのはもちろん、

一刻も早く、

この暴走政権を

国民の手で

終わらせなければならない。

(編集部)