●「天声人語」
●(天声人語)
「共謀罪」、
衆院委で可決

(05/20)

 心のなかを裁く法律ではないか。

不安が消えたとはとても言えない。

犯罪を計画の段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法改正案をめぐり、

あちこちで発せられてきた言葉がある。

▼共謀罪のある社会は、

どこまで監視の目を広げるのか。

作家の平野啓一郎さんの危惧は現代的である。

「フェイスブックなどの
SNSが発達した今、

『友達の友達』は

時にとんでもないところまでつながっていく。

犯罪を漠然としたリスクとして『予防』しようとすると、

捜査機関の監視は歯止めがなくなる」。

▼102歳の太田まささんは18歳のころ、

共産党の機関紙を読んだことを理由に

警察に拘束された。

「時代を逆戻りさせちゃならん。

足さえ動けば、反対を訴えるのに」。

共謀罪の目的は組織犯罪の未然防止だとされるが、

市民の活動が

ゆがめられ解釈される

おそれはないか。

▼「政府は言う、普通の人には関係ない

 しかし判断するのは権力を持つ者、警察だ

 ダメと言われたらそれでアウト」

と歌手の佐野元春さんがフェイスブックに書いた。

一般の人は対象ではないという政府答弁への

疑念である。

▼日本ペンクラブの反対集会で作家の森絵都さんが語っていた。

「日本人の心のなかには、何か起こったときには

国が守ってくれるという

依存や期待があるのではないか。

そこを国に

つけ込まれるのでは」。

そして庇護(ひご)と監視は

必ず一緒に差し出されると。

▼本当にこのまま通していいのか。

衆院本会議にのぞむ議員一人ひとりに問いたい。

(05/20 05:00)