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●厚労省もついに認めた!この「睡眠薬・安定剤」の濫用にご用心 飲み続けると依存症になって…

現代ビジネス
 [1/3 15:01]

写真:現代ビジネス

「デパスは気軽に使われていた薬の代名詞です。

60代、70代になってからデパスを飲み始めた結果、
依存症に陥る人がたくさんいます。

一般内科や整形外科などでも処方されるのですが、
依存性が高いためやめられない人が多い」

こう語るのは高齢者医療に詳しい長尾クリニックの院長、長尾和宏氏だ。

'16年10月14日、
エチゾラム(デパス他)、
ゾピクロン(アモバン他)
という

2種類の精神安定剤・睡眠導入剤が、

第三種向精神薬に指定された。

この指定を受けると、
投与期間の上限が30日になり、

取り扱いがより厳しく規制されるようになる。

厚労省がこの薬の

危険性を認めたのだ。

埼玉医科大学医学部教授の上條吉人氏が語る。

「デパスを始めとする
エチゾラムはベンゾジアゼピン系

と呼ばれる薬です。

神経細胞の活動を抑制する働きがあるGABAという

脳内物質の作用を増強させるので、

GABA作動薬とも分類します。

エチゾラムもゾピクロンも

高齢者に安易に処方されている。

筋弛緩作用があるので高齢者が服用すると、

ふらついて転倒して骨折するという事故が増えています。

また、せん妄の問題もあります。

意識が混濁して、

自分のおかれている状況が

わからなくなったり

実際には無いものが見えて、

不安や恐怖で興奮状態になる。

さらに、これらの薬を

長期間にわたって服用していると

認知症の発症率が

上がるということもわかってきました」

このように、

デパスは

とりわけ高齢者にとって

恐ろしい薬であるにもかかわらず、

これまで日本では

野放しで処方されてきた。

松田医院和漢堂院長の松田史彦氏が語る。

「30年以上も前から、

救急外来に『デパスが欲しい』と言ってくる患者がいました。

デパス中毒です。

欧米では'70年代から
ベンゾジアゼピン系の
薬の中毒性が問題になって、

規制がかかっていましたが、

日本ではそのような動きはなかった。

その結果、日本は

ベンゾジアゼピン系の薬の消費量で

世界トップクラスの国になっているのです」

国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦部長は、

日本でどのような薬が

濫用されているのかを調査しているが、

その結果によると

濫用されている処方薬の第1位が

デパスを含むエチゾラムだった。

「精神科の薬には過量服薬(オーバードーズ)ということがよくあるのですが、

以前われわれが調べた結果では、

オーバードーズの患者が飲んでいる薬で

最も多かったのが、

やはりエチゾラムでした。

また、交通事故を起こした人から検出される薬物で

いちばん多いのが

エチゾラムだったとする報告もあります」
(前出の上條氏)

ようやく向精神薬指定を受けたデパスだが、

これだけで処方が大幅に減るとは限らない。

「処方の上限期間が短くなったことで医師に対する注意喚起にはなる。

しかし、自分がどれだけ

危ない薬を

出しているのか

認識して

いない

医師もいます」

(前出の松田氏)

デパスの適用範囲は
神経症による
不安、緊張、抑うつ、
睡眠障害、
うつ病による不安、
腰痛症など

非常に広いため、

急には処方数が減りそうもない。

高齢者が服用を

注意すべき精神科の薬は、

他にもたくさんある。

「同じベンゾジアゼピン系の睡眠薬で

ハルシオン、
レンドルミン、
リスミー、
エリミン、
ユーロジンなどは

依存性が高い。

デパス同様に

転倒や

認知症の危険が

高まります。

他には

パキシルに代表される

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤です。

本当は
アルツハイマー型認知症や
レビー小体型認知症なのに、

元気がないという根拠で

うつ病と誤診されるケースがよくあります。

安易にSSRIを処方された結果、

副作用で

ふらついて転倒したり

攻撃的になったりする。

向精神薬は急にやめると

離脱症状(禁断症状)があり、

医師と相談しながら

徐々に減量する必要があります」

(前出の長尾氏)

高齢者は肝臓や腎臓の

代謝が落ちているため、

体内に薬の成分が残りやすく、

副作用が若い人より強く出ることも多い。

「医師も専門が細分化されており、

自分の専門分野以外には

興味のない人もいるので、

病院で出された通りに

薬を飲んでいたら、

大変なことになった

ということもありえます」
(前出の松田氏)

安定剤や睡眠薬を飲む際は、

充分な注意と覚悟を持たないと

かえって寿命を縮めることになる。

「週刊現代」
2016年12月31日・1月7日
合併号より