●原発の発電コスト、従来の4割高
 政府データ使い試算

11月23日 03:06

 政府の「エネルギー・環境会議」のコスト等検証委員会の公開データで

原発の発電コストを試算したところ、

発電量1キロワット時当たり約7.7円となり、

2004年の政府試算より約4割高となった。

 検証委は12月中に火力など他の発電コストの試算も終え、

年夏をめどに政府のエネルギー基本方針を見直す。

 朝日新聞は検証委の委員を含む複数の専門家に試算を依頼した。

 試算に使ったデータは検証委が公開した原発建設費や人件費、燃料費など。

 経済産業省資源エネルギー庁が04年に行った試算の条件とほぼそろえ、

原発出力は120万キロワット、
稼働率が80%、稼働年数は40年などと想定。

 原発から出る使用済み核燃料は中間貯蔵後に再処理するとした。

 計算方法は国際エネルギー機関(IEA)でも一般的に採用されている方法を使い、

資本費と運転維持費、燃料費の合計を発電電力量で割ってコストを計算。

 資源エネ庁が04年に試算した原発コストは約5.3円だったが、

今回の試算では物価上昇による建設費の増加などもあり約6.5円になった。

 さらに東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、

放射能が漏れ出す過酷事故が起きた場合の費用を算出した

「事故リスクコスト」として約1.2円を足すと、約7.7円。

 廃炉費用を含む事故リスクコストは、

内閣府原子力委員会が10月下旬に公表した試算結果を援用。

 福島第一原発の1~3号機の事故を「3回」と数え、

事故の発生確率を「500年に1回」、

除染などにかかる損害費用を約5兆円とした。

 04年の試算では原発コスト5.3円に対し、

火力発電の石炭火力が5.7円(1キロワット時当たり)、

液化天然ガス火力が6.2円(同)、

石油火力が10.7円(同)。

 火力発電は燃料費の上昇や温室効果ガス対策費などコスト増になる要素も多い。

 一方で、原発稼働率の想定が80%よりも落ちるなど、

条件によってはコストがさらに上がり、

原発の優位性が揺らぐ可能性もある。

(関根慎一、小堀龍之)

■朝日新聞社