電力が足りないため節電をするのではなく、
 
原発を全廃するために節電する、という考え方にならないのですかね。
日本は。
 
 電力が足りないから、原発はやめられない、
と言う人がいるけれど(そういう考えの人が多い)、
 
原発を全廃にするために、節電をする、
という考え方にならないのですかね。
 
 
●「天声人語」
 
6月8日 00:26
 
 〈行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない〉。
 
 ゲーテの言葉である。
 
 目的地が定まらないと足取りが重くなる。
 
 そんな意味だろう。
 
 逆に、確かな目標があれば急坂や回り道をしのぎ、
転んでも起き上がり、大きな事を成せる。
 
▼文豪の故国ドイツが、原発を2022年までに全廃すると決めた。
 
 主要国初の「脱原発」は、もともと環境志向の強い世論が、
福島の事故で雪崩を打った結果という。
 
 電力の23%を賄う原子力の穴は、風力や太陽光の活用で埋める算段だ。
 
▼すでに割高な電気料金に響きそうだが、産業界も競争力を案じつつ従った。
 
 先々、国民にとっての吉凶は予断を許さない。
 
 ただ、この踏ん切りとスピード感、
 
合意づくりの知恵や努力は学んでもいい。
 
▼敗戦の闇から、技術力と勤勉ではい上がった日独。
 
 先方は異国の失敗で国策を転じ、
 
火元の当方は浜岡を止めたにとどまる。
 
 隣国の電力を買えるドイツとは事情が違うけれど、
日本が「遠くまで行く」には、
 
国民的な熟議と強いリーダーシップが足りない。
 
▼脱原発がエネルギー戦略の根幹にかかわる決定なら、
 
将来図を欠いた節電は枝葉の対応だ。
 
 それでも、国が抱える宿題を我がものとし、
それぞれが「行き先」を決めて頑張るところが日本人らしい。
 
▼企業や自治体には「勝手にサマータイム」の試みが広がっている。
 
 東京都は25%の節電を目ざして今週から都庁職員の出退勤を早めた。
 
 こうした「枝葉」を官民で積み重ねながら、こぞって「根幹」を論じたい。
 
■朝日新聞社