岩崎夏海氏のモスクワ世界選手権観戦のコラムの中で、
印象に残った言葉があります。
●彼女のこの失敗は、真央さんが自ら選択したものだった。
それは、望んで失敗したという意味ではない。
失敗をするかもしれないという覚悟のうえで、それを超える成長を期して、
新しいことに挑戦した--ということだ。
そうして、それはなかなかできることではないと思うのである。
彼女のように若くしながら名も実績もある選手が、
失敗するおそれのあることに果敢に挑戦するというのは、
あまり聞いたことがない。
ましてや今の時代、
失敗に対する風当たりは以前より強くなっているから、
人々は臆病になり、あまり失敗をしたがらない傾向がある。
そういう時代にあって、
真央さんは失敗することをおそれずに、
積極果敢にジャンプの改造に取り組んだのだ。
そのことは、単に競技
者という枠組みを超えて、
現代を生きる一人の人間として、
人々を強くインスパイアするところがあると思う。
もっといえば、ぼくはそこにこそ、
真央さんが多くの人の胸を打つ、
一番の理由が潜んでいるような気がするのだ。
○真央さんが人々をインスパイアさせるもの
今シーズンの真央さんを見ていて感じたのは、そういうことだった。
彼女には、結果の如何に関わらず、
胸を打つ何かが宿っている。
そのことを、あらためて確認させられた。●
「インスパイア」って、どんな意味だろう、と、辞書を調べたら、
「思想、感情を吹き込むこと」
と書いてあった。
私は、特定の選手のファンではないが、
しかし、
浅田真央さんを見ていると、
田村岳斗氏も言っていたように、
ほかの選手は、得点を狙うため、苦手なジャンプをプログラムから外している。
しかし、浅田真央さんは、苦手なジャンプも全部入れている。
3Sを3Loに変えて、3Aを2Aに変えていたなら、
もうちょっと点数は増えていたかもしれない。
しかし、浅田真央さんは、それをしなかった。
そして、言い訳を一切言わない。
そういう浅田真央さんを見ていると、
私たち観客は、やっぱり、インスパイアされてしまうのだな、と思います。
そういう浅田真央さんのひたむきな姿を見て、
私たちは、胸に響く何かがあるのでしょう。
それをインスパイアと言うのでしょうか。