●池上彰氏 原発20基分の「地熱資源」を活用すべきと提案
 
NEWS ポストセブン
 [5/29 16:05]
 
 原発に代わるエネルギーをどうすべきか、
ジャーナリストの池上彰氏は
「日本ならでは」のエネルギーに注目すべきと指摘する。
 
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 私が注目したいのは、「日本ならでは」の新エネルギーです。
 
 たとえば今、最も有望な代替エネルギーの一つは地熱発電です。
 
 日本は火山国であり、地下には1000度ものマグマだまりで
熱せられた高温の地下水が豊富に広がっています。
 
 簡単に言うと、温泉の元ですね。
 
 日本の地熱資源量は、
2300万kW以上。
 
 アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位を誇り、
ざっと原発20基分に相当するとも言われます。
 
 地下に眠るこの“宝”を有効活用しない手はありません。
 
 地熱発電は高温の地下水から熱水や蒸気を取り出し、
タービンを回して発電します。
 
 地下水はその後、再び地下に戻すため枯渇せず、
天候や気象条件に左右されないので安定した出力が見込まれる上、
CO2の排出が少ない。
 
 利点だらけなのです。
 
 しかし、国内の地熱発電所は17か所にとどまり、
総電力に占める地熱発電量はわずか0.3%(2007年度)。
 
 しかも、ここ10年ほどは新設されていません。
 
 なぜでしょうか?
 
 ネックは、初期コストの高さと立地です。
 
 大規模な掘削に費用がかさむ一方、
源泉が枯れることを心配する温泉街の抵抗も根強いのです。
 
 火山地帯は国立公園になっていることが多く、法律的に開発が制限されることもあり、
現状では“宝の持ち腐れ”となっています。
 
 地元の不安を軽減しつつ、地熱発電所との共存共栄を図る
そんな現実的な仕組みが求められます。
 
 地熱発電と同じように、日本の特性を生かした中小水力発電にも期待がかかります。
 
 話題の八ッ場(やんば)ダム(群馬県)のような大規模なダム施設の建設は難しいですが、
中小規模の水力発電所はまだまだ作れます。
 
 また、夜間などの余剰電力を利用してポンプで水を汲み上げ、
昼間に水を流下させて発電する揚水発電も、
山がちで急流の多い日本ならではの発電手段と言えます。
 
 実は、広い土地が必要で大規模な発電が難しい太陽光発電も“小口”の利用なら話は別です。
 
 一戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを張りつけて“自給自足”で発電すれば、
消費電力の約8割を賄えるという試算があります。
 
 太陽光発電は、初期コストの高さやエネルギー効率の悪さ、
経年劣化などの問題点が指摘されていますが、
段階的なエネルギー政策の一環として政府が後押しすれば、
多くの人が協力するでしょう。
 
 「エコ意識が高く勤勉な国民が多い」という日本の特性を活用するわけです。
 
※SAPIO2011年6月15日号