フィギュアスケートネタです。

 「キス・アンド・クライ」のその7です。

 ニコライ・モロゾフコーチは、実にいろんなコーチングテクニックを書いています。



「勝つ」前提条件。

132ページ。
「プログラムを構成する際に、私がもっとも優先して注力しているポイントは、
選手がクリーンに滑ることができるようにすることだ。
 転倒や大きなミスを犯すことなく、きれいに滑り終えることができることが、
優れたプログラムの第一条件だからだ。

 選手が無理をすることなくクリーンに滑ることができれば、
技術面の評価がしやすいので、ジャッジは安心して他の要素に目を向けるようになる。
(技を失敗しないことですね。
そうすると、ジャッジは高いPCSを付けてくれるかも知れません)
 それは、構成面を見るプログラムコンポーネンツスコアにおいて
より良い得点を期待できることを意味している。

 反対に、滑りそのものにぎこちなさが残るようでは、
たとえ最高のスピンとフットワークを披露したとしても、
得点を稼ぐうえでは大した助けにはならない。

 個々の選手にとって、どのようなプログラムを構成すれば
クリーンに滑ることができるのかを見極めるには、長い時間を要する。

 ジャンプに関してだけでも、
一番楽にこなしているジャンプはどれか、
もっともミスをする確率の少ないジャンプは何か、
疲労が蓄積してきたときにもっとも労せずに跳んでいるのはどのジャンプか、
といったことを逐一見極める必要がある。

 選手自身に訊ね、私自身の目で観察することで一つひとつ確認していく。
 そうすることで初めて、どのジャンプからプログラムをスタートし、
どのジャンプで締めくくるべきか、といった要素が明らかになってくるのだ。

 この点においても、選手のスケーティング技術の詳細を把握し、
深いレベルで理解しておく必要がある。
 そうでなければ、選手の長所を最大限に発揮し、
短所を最低限に抑えるプログラムなどつくることはできない。

 選手への理解を深めるために、選手自身に耳を傾けることはきわめて重要だ。
 なかでも、それぞれの技に、どの程度の体力が消耗するかを知ることは必要不可欠だ。

 たとえば、ほとんどの選手はスピンをした直後に、
エネルギーを回復して方向感覚を定めるための時間を必要とする。

 回復に要する時間の長短を見極めなければ、
曲のどのタイミングにスピンを組み入れ、
難しくないステップや立ち止まっての演技などの休息時間を
どのくらい盛り込んでからジャンプを跳べば成功できるかが判断できない。

 その判断一つの間違いで、選手がクリーンに滑るチャンスはゼロにもなりうる。

 こうやって、選手個々の特性を見極めることは、プログラム作りの大前提となる。

 全体的な体力配布も重要だ。
 フリースケーティングの場合、ほとんどの選手は前半の2分間でかなり疲労する。
 どこで体を休ませるか、プログラムの見栄えと得点効率をもとに考え抜くことになる。

 現行の採点システム下においてプログラムを構成する際には、
獲得可能ポイントを最大限にするために、
こうした選手個々の特性をすべて念頭に置いておくのが鉄則だ。
 クリーンで計算上獲得できるポイント数を最大値にしておくことが、『勝つためのプログラム』の前提条件だ」




 ニコライ・モロゾフコーチは、このように述べています。
 これは、当たり前のことかも知れません。

 でも、プルシェンコの振り付け師や浅田真央さんに対するタラソワコーチの判断は、
間違っていたと思うのですが。

 オリンピックシーズンのプログラムは、
その選手の「勝つためのプログラム」でなければいけないはずです。