フィギュアスケートネタです。

 田村明子氏著の
「パーフェクトプログラム」
を今読んでいる最中です。
 全部読み終わってから、全体の感想をここに書きますが、
本の前半で浅田真央さんのことが書かれてあるので、
それについてちょっと書きます。

 浅田真央さんは、頑固者なんですね。
浅田真央さんは、完璧主義者だから、そうでしょう。
 バンクーバーの演技直後のインタビューの涙も、
ジャンプでミスした自分に悔しかったわけです。


 本に書いていることを順番に追っていくと。

 「鐘」について、山田満知子コーチは、
「真央の良さは、あのそよ風のような澄んだ感じでしょう。
あのさわやかな滑りを生かしてあげないと、キム・ヨナには勝てないと思う。
だからあの重厚な音楽はどうなんだろう、って思ったんです」


 田村明子氏自身が書いている記事で、
「私から見た浅田真央の最大の長所は、やはり山田コーチのいう『さわやかさ』であり、
人間離れした妖精のような軽やかなスケーティングができることだった。
五輪という勝負の年なのだから、世界で彼女しか持っていない長所を
もっと生かすプログラムがあったのではという気がしていた」


 ずっと浅田真央さんの振り付けをしてきたローリー・ニコル氏は、
「時には選手が苦手なことをやらせるのも、私の仕事。
でも五輪シーズンは別です。
五輪のシーズンは本人が滑りやすいことだけを考えて、短所を隠し、
長所を強調するプログラムを与えます」

 本の文章をそのまま書くと、

「マオのプログラムをテレビで見たとき、
マオのエージェントにメールを送ろうか、ものすごく迷ったんです。
あともう少しで、本当に送りそうになったの」
そう言ったとき、ローリーは美しい大きな目にうっすらと涙を浮かべていた。
 長年可愛がってきた真央の不調な姿を見ているのが、つらかったのだろう。
私なら、もっと彼女の良さを引き出してあげられるのに、
というもどかしい思いがあったに違いない。



 しかし、浅田真央さんは、
「音楽は替えません。まだ納得のいく演技ができていないのに、そう簡単に替えられない」
と言います。


 それ対して、カート・ブラウニング氏は、
「いい演技ができないからこそ、プログラムを変える。
フィギュアスケートの世界ではそれが普通の考え方です。
正直に言うと、マオも彼女のチームも何を考えているのか、ぼくにはよくわからない」
と言っています。


 そして、本に書いてあるのは、(田村明子氏の言葉)
「だが音楽を替えないとはっきり宣言したとき、彼女にとって大切なのは、

いかに効率よく五輪金メダルを手に入れるかでは
ないのだ

と感じた。

いったんはじめたことを途中で放棄できない。

勝ち負けよりもまず、

自分自身の納得のいく演技がしたいのに違いない。

 私たちが見ている浅田真央という選手は、
19歳のたおやかで可憐な肉体を持った若い女性だ。
だがその中には、

頑固で骨太の武人の魂が入っているのではないか。

それならば本人が正しいと思う道を進んで行くのを見守るしかない」

と。

 浅田真央さんは、口では、金メダルがほしいと言っていたけれど、
「鐘」では勝てないことは、初めから分かっていた。
それよりも、プログラムの内容が、たとえ「鐘」であっても、
その「鐘」を完璧にこなすことの方が大事だったのかもしれない。

 タラソワコーチも、こんな頑固な人だとは思わなかったに違いない。

 タラソワコーチの最初の判断ミスが
(つまり、オリンピックシーズンにふさわしい曲ではない)
意外な結果になり、浅田真央さんの頑固さで、
振り回された結果になったわけです。

 まわりは、4年に1度のオリンピックだから、金メダルをとってほしいと思うけれど、
浅田真央さんにとっては、4年に一度のオリンピックではなかったのですね。

 浅田真央さんは、初めから、23歳まで現役を続けると言っていましたから、
バンクーバーは、単なる通過点だったんですかね。