前回の解答
<例題1>山で一定速度で下る場合に、速く下るのとゆっくり下るのと、どちらが疲れないでしょうか。考えてみてください。

(解答)一定の速度で下っている場合は、筋肉が体重(重力)と同じ力を出して加速されないようにしています。速くても遅くても同じ力です。ですから力を出している時間は短い方が疲れませんから、速く下った方が良いといえます。ただし、何かあった時バランスが保てるかが問題になります。またどうしても膝のクッションを利用した下り方ができにくくなります。下り方の技術(バランス、膝のクッションの利用)を高められると良いのですが、なかなか難しいなと感じています。
このほかの問題として歩幅を小さくとった方が筋肉にかかる力が小さくなります。

運動の第2の法則(ニュートンの運動方程式)
物体に力が働くと速度が増す。速度の増し具合を加速度といい、同じ物体なら力が大きいほど加速度も大きく、両者は正確に比例する。また力が一定なら、その物体の加速度はその物体の質量に反比例する。このことを式で表すと、
(力)=(質量)×(加速度) F=mα
となります。
上の式で、(加速度)は一秒間に速度がどれだけ上昇(下降)するかですから解りやすいのですが、(力)と(質量)の概念は難しいですね。私も高校時代は式だけを覚えていて実感として理解できていなかったと思います。要するに、上の式を満足するのが(力)であり(質量)なのですが。
物体に力を与えると力が大きいほど早く加速され、小さいと加速されにくい。また同じ力を与えても質量が大きいと加速されにくく、小さいと加速されやすい。このような関係が力と質量なのです。

地表では重力の加速度(g)がかかっています。g=(9.8m/s)/sです。ですから地球上に住んでいる生物は質量にgを乗じた力がかかっていることになります。

登山において身長と発生する力の関係を考えてみましょう。
人間の身体で力を発生させるのは筋肉(断面積)です。筋肉と体重の増え方はどうでしょうか。胴体を円筒形として考えてみましょう。各部の寸法が2倍になると断面積は4倍に増えますが、体積は8倍に増えてしまいます。ですから断面積は身長の二乗に、体重は三乗に比例することになります。
ですから同じ形状の人は身長が高くなると体重と筋肉の割合が悪くなります。ですから小さい人が必ずしも登山に不利だとは言えません。

山本正嘉氏は登山における体重と脚筋力の目安として以下の数値をあげています。

肥満度
最低レベル  BMI≦27
目標レベル  BMI≦25
ここでBMI=体重(kg)÷身長(m)の二乗

脚筋力
最低レベル:スクワット10回×3セットを楽にできること。その後筋肉痛にならないこと。
目標レベル:スクワット15回×5セットを楽にできること。その後筋肉痛にならないこと。
(残念ながらスクワットのやり方の資料がありません)

最近速く登れなくなってきたなと実感しています。でもゆっくりならかなりの距離を歩ける自信はあります。車で言えばばエンジンが小さくなってきた感じですね。大きなエンジンなら坂道を速度を落とさず登れますが、小さなエンジンでは速度が遅くなるのは仕方がありません。でも登れるのですよ。
これからの山行、速く登るのはあきらめて、日数はかかってもゆっくりが故の山自体の良さを感じられる登山をしていこうと思っています。