パンズ・ラビリンス(06・スペイン・メキシコ) | no movie no life

no movie no life

・・・映画を見て思ったことをツラツラと。ネタバレです。

かなり昔に書いたのも。

ブラックなリアルに対抗する、ダークファンタジー。


軍事政権とそれに対抗するレジスタンスの戦いが激化する、1944年のスペイン。内戦で父を亡くしたオフェリアは、母の再婚相手である大尉のもとにやってくる。しかし、新しい父は残酷なファシストで、オフェリアにばかりか、身重の母にも冷たく当たるのだった。そんなとき、森で不思議な迷宮の入り口を見つけたオフェリアは、不思議な動物であるパンと出会い、自分が地下王国の王女の生まれ変わりだと告げられる。


ダーク・ファンタジーと言うふれこみだが、ほとんどはファンタジーではなく現実世界の残酷な風景の描写だ。人間世界の闇に、無垢な魂は耐えられない。少女はパンの話を信じ、過去に自分が暮らしていたという地下の王国に戻ろうとする。しかしその王国とは、なんてことはない、黄泉の国ではないのか?なんともいえない苦い味がこみ上げてくるのだ。それほどまで、この映画は観るものを絶望の淵に立たせる。


舞台はスペインとなっているが、実際には、今も愚かな歴史を繰り返す現実世界に向けた警告なのだろう。人を人とも思わないファシスト。先の見えない抵抗運動に苦しむレジスタンス。戦争で伴侶を失った寂しさから愛を求めた母。自分を愛するあまり、自分の分身である息子を求める愚かな父親。希望の無い世界に投げ出された幼い命。私たちは、いつだってそんな状況に陥る可能性があるのだ。


しかし・・・難をいえば、グロい。グロ過ぎる。拷問や口裂けのシーンなどは見るに耐えない。生理的にダメ。穿ちすぎかもしれないが、嗜虐的趣味まで感じてしまう。・・・こういった要素がもうちょっと緩化されば、クロウトだけでなく、もっと一般受けする映画であったのではないだろうか。


とは言え、数々の賞を受賞した美術部門についてはさすがと納得させられる。怖い形相をしたパンや機械のように動く虫や妖精、ハリポタのボルデモードのような形相の目玉の無いクリーチャーはよくできている。現実世界から違和感無くすんなりとファンタジーに入って行けるのはすばらしい技術だ。


それから、予告編も良くできていた。あれで騙された人も多いだろう。今考えれば、予告編にあったシーンは結末だったんだなあ。なんと潔い作り方。