人間の心の深遠を覗くものは、向こうから覗かれることに注意しなければならない。・・・ミイラ取りがミイラになる危険性。
原題「THE FLOCK」。訳すと「群れ」ですね。なかなか邦題つけるのは難しそう。
2分に1回、快楽犯罪者が生まれているアメリカ・・・過去に性犯罪を犯した人間たちを監視する監察官・バベッジ(リチャード・ギア)は、仕事に没頭する孤独な毎日を送っていた。18年勤めた監察局の退職時期を間近に控え、彼は後任予定者のラウリー(クレア・デインズ)を教育することになる。ラウリーは強引で非人間的なバベッジのやり方に嫌悪感を抱いていたが、ある日少女の失踪事件が起きる。家出か、もしくは誘拐か。バベッジは誘拐と推測し、自分が監視している「群れ」の中に犯人がいるのではと捜査を始める。「インファナル・アフェア」3部作のアンドリュー・ラウ監督、初のハリウッド作品。
バベッジはある事件を契機に、この仕事に必要以上にのめりこみ、誰も人間を信じられなくなっていた。いつしか、犯罪者たちの作り出す異常な性癖や暴力に彼もいつしか足を踏み込んでいく。自分でも分かっていながら衝動を止められないバベッジ。このストーリーの焦点は、最初から最後まで「バベッジが犯人なのか?」というところにある。SWで言えば、彼はダークサイドに堕ちてしまったか否かということだ。
性犯罪というのは凄く厄介で、更生しようと努力する人間もいる一方、治らない性癖となるケースも多い。また、犯罪者も被害者であることがある。被害者と加害者の境目はあいまいで、結果的には「作られた犯罪者」となってしまう。監察官は信じては騙され、自分の人間性をもすり減らしてゆく。犯罪に限らず、他人の悩みや病いという陰の部分に接する人間は、常にこういった恐怖に晒されているのかもしれない。リチャード・ギアは、全く好感の持てない、偏屈で無愛想な主人公を巧く演じている。
しかし・・・ここで描かれている犯罪は猟奇的で凄惨であり、私は本当に目を背けてしまった。劇中のバベッジもさることながら、こういう映画を作ってる人たちも、その闇に堕ちないのかと不安になる。
性犯罪は、被害者の身体だけではなく心や人間性をも踏みにじる憎むべき犯罪だ。一生深い傷を負っていかねばならない人間の苦悩ははかり知れない。だけど現実には、起きてしまった事件の再発は防げても、未然に防止することは難しいんだよね・・・
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