夏休みということで、今回は読書感想文です。


読んだ本は、

『E.ヘミングウェイ,小川高義訳「老人と海」光文社古典新訳文庫(2014)』

です。




一番に感じたのは、老人サンチャゴの魅力です。


無い物に縋らないし、失ったものを数えない。

常に前に進み、卑屈にならない。

自然や自己と対話する姿勢には、現状を受け止める器と孤独を憂慮しない度量を感じます。

また、数々の鮫との戦いをやり切った後の態度は潔く、静かに家(≒日常)に帰る姿には敗れざる者のかっこよさがあると思いました。


エネルギッシュでありながら朴訥なこの老漁師に憧れを感じるほど、自分には魅力的に映りました。



また、この老漁師の設定が魅力を引き立てたと思います。


難しい状況でも戦い続けるサンチャゴに魅力を感じたわけですが、この“難しい状況“が自分にとって現実味のあるものだったのが良かったです。

不運や孤独、作業中のトラブルといった自分が直面しやすいものだったからこそ、それと向き合い続ける彼の凄さを感じることができました。

これがもし、家族との死別や病気、凄惨なトラウマというような設定だったとしたら、もう少し距離を取った敬意になったと思います。



不思議な感覚でした。

登場人物に心アツくなり、情熱が燃えるような想いを感じつつも、静かで丁寧な心持ちになるような本でした。

スポ根系の作品が心に火を点け一気に燃え上がらせてくれるものだとしたら、この作品は心に火を点けると共にケースを与えてランタンを作ってくれるような本でした。


面白かったです。

文量も1,2時間で読める程なのでぜひ読んでみてください。胸張ってオススメできる素晴らしい本だと思います。