分娩の翌日は朝から退院前診察を受け退院が決まりました。
息子は涼しい場所がよいとのことでナースステーションで預かってもらっていたので、旦那さんと迎えに行きました。
私たちは個室へ案内され、そこで最後のバースプランでお願いしていた体拭き、産着を着せる、納棺を夫婦で行う準備をしました。
まず看護師さんが用意してくれたガーゼをお湯に浸して旦那さんと交代で息子の体を拭いてあげました。初めてじっくりと触った息子の体はとても冷たくて、軽くて、皮膚はペタペタとしていました。でも触れると骨がしっかりとしていることがよくわかりました。
「おじいちゃんに似て、がっしりしているね。背が高いね。手も足も長いね。」
旦那さんと話ながら体拭きが終わりました。
手縫いで用意していた産着は少し小さく、羽織るだけになってしまいました。
そこでオムツを用意するのを忘れていたことを思い出し、「パパ、パンツがない!どうしよう?」と焦っていると、看護師さんが「大丈夫!あるよ!」と手作りの小さな布オムツを持ってきてくれました。
そこで初めて同じように子供を亡くされたお母さんたちがボランティアで産着や布オムツを作ってくれていることを知りました。「ありがたいなぁ」私がほっとしていると、旦那さんが息子に「ママはおっちょこちょいやからなー」と言っていて少し笑ってしまいました。
パパに帽子を被せてもらってお着替えは終わりました。
最後に夫婦で選んだ棺に敷かれたお布団に息子を寝かせてあげました。
棺の中に入れるものは帰ってから子供たちと一緒に入れたかったのでその場では入れませんでした。看護師さんたちが作ってくれた干支の折紙や「お腹空いちゃうからね」と粉ミルクを持って来てくれました。
私たちは看護師さんたちにお礼を伝え、病院を後にしました。
「さぁ、お家に帰ろう」
数日ぶりに出た外は空気がとても澄んでいてよく晴れていました。

家に帰ると子供たちがおばあちゃんの家から帰って来ていました。
長女と次女が「ママー!赤ちゃん!おかえりー!!」と駆け寄ってきました。
長男もお姉ちゃんたちの後をちょこちょこと走ってきました。「赤ちゃん見せて!」と何度も言うので棺の蓋をあけて見せました。
赤ちゃんを見た子供たちは「かわいい!小さい!」とずっと見ていました。
長男は不思議そうな顔をしていました。
旦那さんが長男を抱っこして「大きくなったら覚えてないやろうけど、おまえには弟がいるんやで。お兄ちゃんになったんやで。」と教えていました。私はそんな様子を見ながら「これで家族全員、6人揃ったね。おかえり。」と心の中で呟きました。
火葬場がとても混んでいて火葬までは数日あり、私はまだしばらく側にいれるとほっとしていました。息子のお家は我が家の嗜好品用の冷蔵庫になりました。火葬までの数日は毎日、朝、昼、晩と家族団らんの時間には冷蔵庫から出て、寝るときには冷蔵庫に戻る…というのを繰り返して過ごしました。
息子は毎日、お姉ちゃんたちが何度もおはよう!と顔を見にきたり、パパの晩酌に付き合ったり、お兄ちゃんに投げられそうになったり、私の話し相手をしたりと忙しそうでした。
亡くなっていても家族で一緒に過ごせる時間は本当に本当に幸せで、涙よりも笑顔がたえない数日間でした。
久しぶりに家のベッドに横になった私は数日ぶりに深く眠ることができました。

次回は火葬当日とその後のことを振り返りたいとおもいます。