最近、オーディトリーニューロパチー(以下、AN)の疑いがあるお子さんを持つ保護者の方と繋がってきました。私のココログをご覧になって連絡が来ます。いまメールで話をしているお二人は、お二人とも複数の病院で異なる意見を言われ、混乱されています。

 

うちもそうでしたが、ANは自閉症スペクトラムと間違える医師が多くいます。また、その他の言語発達障害があるケースもある重複障害のケースもあるため、はっきりとした診断が出ないこともあるようです。うちのように難聴の発見遅れの場合、保護者が難聴ではないかと思っていても、医師がなかなか難聴と診断しないことがあります。新生児スクリーニングで難聴と言われた方は、さぞかしショックだったと思いますが、発見遅れの場合は、難聴だと分かった時は嬉しかったです。診断されないと、次のステップに進めないからです。

 

いま相談にのっているお二人の保護者(お子さんが10歳と6歳)のお気持ちを考えると、その辛さが伝わってきますし、早く何らかの診断がくだり次のステップに進んで頂きたいと願っています。

 

お話をしている中で、ANとAuditory Neuropaty Spectrum Disorder (ANSD)の違いをきちんと患者さんに伝えていない医師がいるような気がしましたので、整理しておきます。もし周りでANの疑いがあるとされた方がいらしたら、一度確認された方が良いと思います。ちなみに、次女は明らかなANでOTOF遺伝子が発見されたため、人工内耳の効果があるようです。

 

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*Auditory Neuropaty Spectrum Disorder (ANSD)
 新生児聴覚スクリーニング(NHS)でABR(-)、 OAE(+)の結果を呈した新生児をANSDとする。ANの他に、その後ABRが正常化する病態、難聴が進行しOAEが消失する病態など様々な病態を含む。

*Auditory Neuropaty (AN)
 ANSDの一種。 OTOF遺伝子やOPA1遺伝子等の主な責任遺伝子が明らかにされている。ANはANSDを呈する一病態であるが、同義ではない。

・ANSDの中にANが含まれる。
・ABR(-)、OAE(+)だから一概にANとは言えない。
・加我先生の2017年の論文でもANとANSDを同一で考えない方が良いと述べている。
・ANならOTOFが原因とも限らない。その他の遺伝子変異が関係している可能性もあり。
・OTOF遺伝子変異のANは内有毛細胞のシナプス前部に障害がある為、人工内耳の適応で良好な効果が期待できる。
・OPA1遺伝子変異でも、シナプス後部の蝸牛神経側で蝸牛神経障害ではあるが、人工内耳の効果は期待できる。


参考論文2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/121/3/121_234/_pdf/-char/ja

https://www.amed.go.jp/content/files/jp/houkoku_h27/0104015/kan_004.pdf