ウニョリー討伐決行日まで後一日。
念には念を入れ、再び偵察部隊を向かわせる議員達。
ナベリウスに降り立った偵察部隊は以前より多く、離れ散り散りになり偵察している。
「こちらA部隊。討伐対象を確認」
「B部隊了解、討伐用フォトンエリアを射出する」
「C部隊了解」
「A部隊了解」
「こちらD部隊、フォトンエリア射出準備完了、B部隊合図を」
「B部隊了解」
フォトンエリアを展開し、浸食されているウニョリーの力を弱め、後日部隊が迎撃、という形から戦闘に入るらしい。
「フォトンエリア射出用意」
「B部隊、三秒後に発射する」
「D部隊了解」
合図が始まる。
「3、2、1…発射!」
B部隊の発射宣言と同時に二つのフォトンエリアが放たれる。
誰もがエリアの展開に成功したと思った、その時である。
フォトンエリアが空中で破壊された。
「…!?破壊されたぞ!」
「どうなって…」
B部隊、D部隊共に動揺を隠せないが、さらに事態は急変していく。
「こ、こちらC部隊!!お、応援を…がっ!」
C部隊からの通信。
何者かに襲われているのか、通信が切れる。
「C部隊!C部隊どうした!応答しろ!」
「しないわよ」
A部隊中に突如現れる女と男。
一人は老人のようだが。
もう一人は正だ。
「ごめんなさいね、邪魔しないで」
「何を…!」
「皆さんにウニョリーさんの情報を漏らされては困るのですよ、失礼」
老人は腰辺りから杖のような、剣のような武器を取り出す。
ウォンドのヴァルスオーナムだ。
「ヴァル」
「承知」
テクニックのチャージが始まったと思った矢先、A部隊の人間は風のテクニックにより切り刻まれていく。
「ひっ…!」
生き残りが数人。
「おや」
「…ヴァル」
正が右手を広げる。
「はい」
ヴァルスは光に包まれ、武器となる。
その姿はヴァルスオーナムそのもの。
「…」
逃げるA部隊の人間に無言で向けられる武器。
そこから放たれるイル・ザンにより、彼らは蹴散らされる。
・
・
・
「逃がすなんて情けないわよ」
「申し訳ありません…背後にまで気を向けられず」
「私がいないときはできたことなのに?」
「では、正さんがいらっしゃるから安心した、ということで」
「ふっ…上手いことを言うわね」
「えぇ、あなたに仕える身ですので」
そういってヴァルスは姿を消した。
「…」
ナベリウスの上空を見る。
空は青く、一部が赤黒く染まっている。
「誰かしら」
背後から足音。
「誰でもいいだろ」
ヘルドラドだ。
「よくないわよ、何しに来たの」
「一応俺が編成した偵察部隊なんだがなぁ」
「…全滅よ?」
「まだ他の部隊が残ってる」
B、D部隊のことだろう。
「もういないわよ」
「…?」
ヘルドラドが通信機でB、D部隊に通信をかけるも、応答がない。
いつのまに攻撃を仕掛けたのか。
「どうなってる?」
「生憎、邪魔者排除してるのは私だけではないの」
「…へぇ」
ヘルドラドが素早く、落ちているガンスラッシュで正に斬りかかる。
A部隊の誰かが持っていたものだろう。
正はそれを難なくヴァルスオーナムで受け止める。
「上等!」
「…」
連撃の末、距離を置き、体勢を立て直すヘルドラド。
「…どこでそんなに強くなってきた」
「教えるとでも?」
「だよなぁ…」
ヘルドラドは武器を捨て、正に背中を向ける。
「決行日は明日だ、お前はどうする?」
「私は手を出す気はないわ、あの子達が好きにするでしょ」
「…馬鹿息子と一番縁があったくせにか?」
「縁も何も」
正はヘルドラドに背を向ける。
「もう敵同士よ」
ヘルドラドがその言葉を聞いて振り返ると、すでに彼女の姿はなかった。
「…敵…か」
そこに落ちていたのは、一つの緑の羽。
翠翼 ~戻らぬ彼女