「The Untold History of Japanese Game Developers」 | MSX研究所日記

「The Untold History of Japanese Game Developers」

クラウドファンディングの「KICKSTARTER」をご存知でしょうか?

クラウドファンディングとは「やりたいことがある、しかしそのための資金がない」そんな人が「やりたいこと」を公開して一般の人から広く資金を募るというものです。
売れるかどうか分からないものに対して出資が見込めない、そんな企画に対して広くコンセプトを提示して有志から資金を募るわけです。

KICKSTARTERはこの手のサービスとしては英語圏では既に有名で、色々なプロジェクトの成功例があります。
その内容は「オリジナルデザインの時計を作りたい」とか「CDを出したい」とか「素材にこだわったビーフジャーキーを作りたい」なんてものまで、多種多様です。

ゲーム開発の世界でも昨今の開発費の高騰から、クラウドファンディングによる資金集めが行われるようになりました。
中でも「WASTELAND2」というプロジェクトは目標額を大きく上回る資金集めを完了し、現在開発中と言われています。
「WASTELAND」というのは1989年にAplle2などで出た、MSX2と同世代となる筋金入りのレトロゲームです。国内では販売されませんでしたが、後に「Fallout」シリーズの原型になったことで有名です。「Fallout」は1と2が1997年と1998年に出たもののその後様々な事情からシリーズが止まってしまい、2008年に「Fallout3」が大ヒットして息を吹き返しました(3になってやっと日本語版も発売されました)。その過程で原典たる「WASTELAND」の知名度も上がり、「Fallout」とは異なる系統の続編「WASTELAND2」を作るプロジェクトに注目が集まったというわけです。ややこしいですが。

クラウドファンディングはいろんな形式がありますが、KICKSTARTERでは目標額に達しなければ支払いが発生しないため、それなりに安心です。
資金集めに成功して、プロジェクトが開始してもそれが完了するかどうかは主催者次第なので、「それなりに」ですが。

この方法の特徴としては、一般の顧客が先にお金を払う約束をする、というところでしょう。
必ずしも顧客になるわけではなく、純然たる寄付になる場合もあります。


さて、このblogで取り上げる以上は当然MSXがらみなのですが、そのプロジェクトがこれです。
The Untold History of Japanese Game Developers(語られざる日本ゲーム開発者の歴史)」


英国在住の「John Szczepaniak(ジョン・シュチュパニアック)」氏が日本のゲーム開発について一冊の本にまとめるべく企画を立ち上げたものです。
彼の気合いの入りぶりをMSX的に見てみましょう。

リンク先を下のほうに見ていくと、何やらMSX2版の「メタルギア2・ソリッドスネーク」(1990年)の箱を持った人物が現れます。

お名前は「Toshinari Oka」。この方、「ワイルドモンキー岡」氏をご存知でしょうか?

メタルギア2のオープニングには確かに出てきます。
メタルギア改Dの股間。

より詳しくは、ゲームの翌年に出たCDのライナーノーツを見ると分かります。

MSX版のサウンドトラック。(強調筆者)

岡氏の写真をクリックするとインタビューが読めます。内容はライナーノーツとの重複も多いものの、岡氏単独のインタビューはこれが唯一かと思います。
これはメタルギア関連の企画の一環として行われたもののようで、初代「メタルギア」のプログラマー、大塚氏へのものも見ることができます。「メタルギアソリッド」以降有名になった小島監督へのインタビューはそれこそいくらでもありますが、あえて監督以外のMSX2版やファミコン版のスタッフに注目した例はかなり少ないと言えましょう。

こんな感じで(MSX的にも)大変に期待の持てるプロジェクトなのですが、残り一週間くらいで目標額の80%ともう一息足りない感じです。
5万ポンドに対して4万2千ポンド強ですから、残り8千ポンド(120万円くらい)ですな。

さてKICKSTARTERでは「出資額に応じて受け取れるものを変えられる」というのも一つの特徴です。
もちろん全員を均等に扱うこともありますが、額に応じてプロジェクト完了後に受け取れるものが変化するものが多くあります。
普通のゲームにも「限定版」「通常版」というのが見られますが、出資額を任意で決められるため、より細かいランクづけが可能です。このプロジェクトもそうした要素がありまして、ページの右に書かれているのを簡単に説明すると…。

※£=ポンド、日本円は全て1ポンド150円換算。

£5(750円):本に名前が載ります。
£12(1800円):pdf版のダウンロード権。
£25(3750円):シルバーエディション(白黒印刷)の本が届きます。国際送料込み。
£33(4950円):シルバーエディションの本+pdf版のダウンロード権。
£35(5250円):ゴールドエディション(カラー印刷)の本。
£40(6000円):ゴールドエディションの本+pdf版。
£65(9750円):シルバーエディションの本+DVD。pdfはナシ。
£80(12000円):ゴールドエディションの本+DVD。pdfもあり。DVDにはインタビュー音声や写真などが入る模様。

さらに上には120ポンド(ゴールドエディションの本が2冊+DVD+質問権つき)、500ポンド(本が3冊+DVD+何ページか貰えるらしい)、5000ポンド(インタビューした人全員のサインつき)なんちゅうのもありましたが、このあたりは限定数に達したのでもう締め切られています。

ミリョク的なのは£80以上のDVD版でしょうか。この本、インタビューも本の中では英語になってしまうのですが、元の音声(インタビューそのものは通訳を介して日本語で行われるらしい)が聞ける(かもしれない)、というのは日本人的にもなかなかのプレミアムぶりです。

もちろん、研究所長たる私も出資の申し込み済みです。
以前の記事「MSX Cartridge Shop・買い方編」でも使ったPayPalが使えるので、手続きは簡単です。


KICKSTARTERは日本での知名度が低いせいか、今一つ日本からの出資者が少ない傾向にあります。
というわけで日本のMSXユーザーの皆様、本の値段としては高いかもしれませんが、ここは一つ皆でゼニを出してやっちゃあくれませんか。
もちろんMSXを持っていなくとも、日本のゲーム史を海外からの視点で論じてくれるのに期待する向きは、ぜひとも。

イギリス在住にしてPC-8801でしか出ていない「バトルゴリラ」(クリスタルソフト、1989年)がお気に入りというあたり、渋すぎますよ彼。
ちなみに最後の文章が意味分からんかもしれませんが、「comrade」=同志(ここ参照)、「CHARGE」=突撃という意味です。軍事ネタ。