アドボケイターという言葉をご存知ですか?恥ずかしながら浅学なもので、昨日までこの言葉を知りませんでした。意味は、「誰かの味方をする」「誰かの権利を守る」「誰かのために主張する」人のこと、要するに「誰かの擁護者・代弁者」のことだそうです。
医療分野における患者の権利擁護がはじまりのようですが、広くは情報へのアクセスや福祉と繋がる力に欠けた、障害者や社会的弱者がアドボケイトするべき「誰か」として想定できます。
私は発達障害の娘を育てるなかで、いろいろと福祉や行政のお世話になってきましたが、ふり返れば公的私的を問わず、様々なところで手厚い支援に繋がってきたと思います。小学校や保健福祉センターの主治医など、自分では選べないご縁にも恵まれてきましたし、京都市が一定の規模のある街であることから、広く見解の分かれる発達支援の方法論の中から、娘に合うところを選択することさえできました。もう、住んでいるところが違うというだけでも、「あなたは恵まれている」と言われてしまえば続く言葉がありません。
たぶん私は情報を集める訓練をそれなりに受けていて、仕事がら説明や交渉事にも慣れていて、役所で働いていた経験もあり少しは役人的思考パターンも心得ているかもしれません。つまり、支援につながる段階での支援は必要のない「お母さん」だったのだと思います。残念ながら同じ京都市に住んでいるのに、行政や関係機関の対応への不満を募らせる人に言わせると、祖父母の代から京都市に住んでいること、実家で自分の両親と同居していること、外国人で同居していないとはいえ夫がいること、それなりの仕事や収入があったこと等々、私はこの街で差別される要因がない階層に属し、結果的に特別恵まれているのだといいます。周りに困っている人たちがいっぱいいるのに、自分さえ良ければ不公平でお粗末な福祉の現実に興味を持たないというのは、とても冷たい態度なのだと。
確かに、私の周りにはそこまで困っている人はいなかったかもしれません・・・。本当にもっともっと福祉を必要としている人たちは、私の視界にはいなかったかもしれません・・・・。だって多くの保護者さんたちとは、支援機関を通して出会っているのですから。
実際、いままでは自分の娘への対応だけで本当に手一杯で、所謂「弱者」に思いを馳せる余裕はありませんでした。このブログにしても、私が本当に自分の仲間だと感じているのは発達障害の当事者である子どもたちであって、彼らを代弁して保護者への要求を書いていることが多かったかもしれません。たぶん、情報や支援から疎外された弱者というのは、子どもたちではなくて保護者であるかもしれないのに。
これまでも私流の発達障害の子育てや、支援を求めるうえでの裏技を書いたりしてきましたが、私はたぶん自分と娘の「ケース」を開示することで、どこかで私のような子どもが、私が望んだように対応してもらえればいいなという、淡い希望を抱いてきたのだと思います。あと、「無理に学校へ行かせないで」、「無理に字を書かせないで」というような、自分自身にとっては最も基本的な願いだけど、ほとんどの人にとってはかなりハードルの高いことを主張して来たと思います。私には福祉的な発想も博愛的な感性もなくて、究極的には「自分に似たタイプの子どもたちを自殺から守りたい」という思いばかりがとても強いのだと思います。
それでも、私はアドボケイターになれるものならなりたいと思います。福祉分野のことは全くの素人だし、使える制度にも支援機関にも詳しくないし、かなり非常識な独自の子育て観があるし、私には他人を代弁する資格とかは全くなさそうです。それでも、話を聞いたり、支援に繋がるための情報を集めたり、一緒に役所の窓口に行くくらいのことはできるかもしれません。ひとり親であることや知的障害、精神障害が原因で貧困状態にある保護者が、支援機関に繋がる過程を少しくらいは支援できるかもしれません。私自身には知識も経験もないけど、すぐそこにいるらしい彼らの存在を、どうでもいいと思っているわけではないから。
これまで書いてきたように、今も究極的には発達障害の子育ては自己責任だと私は思っています。なぜなら、これをやれば必ずうまくいくという方法なんて一つもない中で、自分で決めたことを出来る範囲でやるしかないからです。それでも、最低限の支援にさえたどりつけない人々がたくさんいるのなら、彼らの姿は見えず、声も聞こえないのだというのなら、何かが足りないのだとは思います。それはきっと制度の問題でもあるだろうし、隣人への関心という地域の問題でもあるのでしょう。そうはいっても、制度や地域の力は短期間で作ったり変えたりできるものではありません。今、不完全で不公平だという福祉の現実を補完するのは、専門性を備えたレベルの高いアドボケイターと、いつでもアドボケイトする心の準備がある、たくさんの普通の人々だと思います。
あなたの周りに声も上げられない人はいませんか?