発達障害も色々ですが、動物との関わりに特徴が見られることもあります。本格的な加虐性向は発達障害の有無に関わらず、ある人にはあるし、ない人にはないですが、今日はそのお話ではありません。

FBグループの投稿の中で、鴨に石を投げてぶつけてしまう、池に入って鯉を捕まえてしまうという8歳の男の子のお母さんのお話を拝見し、私見をコメントしようとしていたのですが、ちょっと長い話になるし、同じお悩みをお持ちのお母さんもおいででしょうから、あらためてブログに書くことにしました。

まず、当面の問題行動を避けるという事と、息子さんの社会的人格形成の為の支援は別物だという事をご理解いただきたいと思います。

息子さんの発達障害のタイプがわかりませんが、命の大切さを丁寧に言葉で教える、本人が執着できる対象(生き物)を家で飼って、命がなくなるととても悲しいという経験をさせる、投稿のお母さんがされたように同じ経験をさせて他者の痛みを想像させる、等などあるでしょうが、お子さんのタイプや発達段階、行動の理由によっては、あまり効果ないかも知れないと思います。

私は田舎の子でしたから、周りの「普通」の男の子たちは中学生くらいまで、かなり残酷な事を「普通」にやっていました。カエルに爆竹入れて火をつけるとか、カマキリを交尾させてメスにオスを食べさせるとか。いわゆる「人間性」の獲得には時間がかかり、定型、発達障害を問わず、まるで心も命を食するがごとく、たくさんの命を犠牲にしながら大人になっていく場合もあるのだと思います。

8歳の息子さんは動くものに関心があり、狩猟本能、動体視力、反射神経、身体能力などで高い発達を示されているように思います。時代や環境が違えば、社会で高く評価される素晴らしい資質だったかも知れません。優秀な狩猟者とか戦士として、共同体を守ったり繁栄させる将来を期待されたかも知れないわけです。してはいけないない事は教えなければなりませんが、彼には他の人よりも優れている点がある事も同時に伝えておきたいです。「しかし、○○君は凄いね。池の鯉を手掴みなんて、お母さんには絶対できないよ」とかです。

他方、今の私たちの社会の価値観においては、「命を尊重し慈しむ」というスタンスは非常に重要な基本になっていますから、そこは何らかの形で押さえたいわけです。ただし、その根拠は彼の特性がもつ思考形態において、納得できるものである必要があります。先ずは、自分の行為が動物を傷つけるという事が認識できているかどうかも疑問です。他害の辛いところは、悪気がないところです。ぬいぐるみやおもちゃと、動物、お友達が並列に認識されているという状態は珍しいことではありません。お人形にさえ共感して、「髪を引っ張ったら可愛そう」だと1歳くらいで感じる子もいれば、大人になっても本質的理解には至らない人もいるでしょう。それでも、何らかの形で社会的人格を整えたいわけですから、動物を大切にするというのはどういうことかを、「具体的に」教えなければなりません。その上で、動物を大切にする人は「いい人」「やさしい人」「素敵な人」などと評価され、得をすると認識させます。お母さんや他の大人にも褒められる、友達に尊敬される、もう少し大きくなれば異性にモテるなどという卑近な事でもいいわけです。とにかく、先ずは本人に「このルール」は自分と関係のある事だと認識させなければ始まりません。

「これは良くないね」「これはいい事だね」と日常的に言葉で確認し合うことは重要ですが、強く叱ってみて効果がないなら、その方法は有効ではないと判断すべきだと思います。場合によっては、怒られても反応しない子が、大好きなお母さんが自分の為にひたすら相手に謝ったり、罵倒されて泣いている姿を通して、悪いことをしたと認識できる場合もあるでしょう。何が有効かは特性や発達段階、時期によって違うと思うのです。「怒られるから」「非難されるから」という理由で衝動や行動を抑制できるのも、かなりの自制能力がついてからの話になります。基本的にある種の発達障害の子どもたちは、定型の人たちに比べて非常に強い刺激を受け取たり、非常に強い衝動がありますから、普通に振る舞うためには普通以上の自制心が必要だと理解しておくべきです。これを、常識的な普通の躾でクリアするのは無理だと思います。

たとえば、欲求や衝動を害のない形で満足させてあげる方法を考えてみましょう。ゲームやスポーツの多くは、人類の中にある狩猟本能を満足させるようにできていると思いますし、私達の子ども時代は、網や素手で魚や虫、蛙、カナ蛇、トカゲ採りを散々やっていました。充分に発散できる環境も大事でしょうし、自分の好きな事、得意な事で評価されると自己肯定感も得られます。その上で、問題行動の想定される場所を、可能な限り避けるという事も必要かと思います。経験しないと身につかないというご意見もありますが、発達や安定によって衝動レベル自体が下がることもありますし、様々な経験や疑似体験、シュミレーションを通して自己抑制能力がつき、問題行動が抑制できるようになる可能性もあります。何にしてもすぐに出来るようになるわけではありませんので、数年単位で待つ覚悟が必要ですが、その時が来たらいつの間にか嘘のように問題はなくなっていたりします。

そうは言っても毎日の生活は本当に大変で、親御さん自身の感情や価値観において受け入れられない事もあるでしょう。それでも、こんなことは何時までも続かないという希望を持って、未来を信じて頑張りましょう。今わからせないと永遠にわからなくて、とんでもない大人になるというわけではないのです。

ちなみに私の娘が小さい頃は、動物の感情が読めないくせに動物が大好きで、無神経に追いまわして触っては、噛まれたり引っかかれたりして危なかったです。一度などは奈良公園で頭を下げて威嚇している鹿に突進して、文字通り吹っ飛ばされた事もあります。いくら教えても嫌がられている、恐がられている、怒らせているがわからなかった娘は、たくさんの授業料を払い続けた結果、いつの間にか動物に関心を示さなくなりました。上手くコミュニケーションをとれるようにはなりませんでしたが、4年生頃になって「○○はゆえの事好きじゃないし、ゆえも○○好きじゃない」と言いだして動物に構わなくなりました。親としては心の痛い部分もありましたが、いつのまにか猫との遊び方だけを覚え、今では猫が大好きだと言っています。今の娘は中学1年生の12歳ですので、この先他の動物とも付き合えるようになったり、楽しく過ごせる時も来るかも知れません。まだまだ、すべてが発達途上なのです。

さてさて、最後に申し上げておきたいのは、賠償責任保険をお勧めしたいということです。「そこじゃない!」と思われるかも知れませんが、万が一にでも高価な錦鯉などを殺してしまったら、損害賠償は現実的な問題になります。自動車保険や傷害保険の特約として、ささいな保険料で付加できますので、必ずご加入されることをお勧めします。

それでは皆様、長期戦ですので肩ひじ張らずに頑張りましょう。