自閉症の一つの特徴として、他者との共感の欠如が認められています。

うちの娘は、いわゆる健常者の概念で言うところの自然な共感が極端に薄いということはわかっていました。そこで、10歳の今に至るまで教育といえば情操教育にすべてをかけてきました。社会で生きていくためのスキルとして、「思いやり」を至上の価値としてすりこんできたんです。小さい頃には、「やさしくする」のは自分に得になるからだと教えました。

 あと、膨大な量のアニメを見せて、人はこういうときにはこんなことを思う、だからこういう反応をするというのを、データとして蓄積してきました。(本当の人間関係からは学ぶことが難しいからです)。今でもデータにないような特殊な状況に至ると、やっぱりわからないんだなあと思うことはありますが、基本的に「思いやりのあるやさしい子」に育ちつつあります。

 また、自然に共感できないだけに、「△△ちゃんはどういう気持ちなんだろう」と、興味をもって観察し、分析する習慣も付いています。自分の子どもの共感性が低いなどというのは、読み書きができないこと以上に恐ろしいことでしたが、私たちは真正面から戦って、勝利しつつあると思っています。

 発達障害のお子さんをもつ方々にはお勧めしたいのですが、発語の遅れや読み書き困難に目を奪われるよりも、他者に共感する能力があるかどうかに注目してほしいです。人に共感できないなら、それをスキルとして身につけさせる教育をめざす。共感する力は伸ばせます。また、本当には伸ばせないとしても、「思いやり」「やさしさ」を思想・価値観として形成し、観察、分析、想像のプロセスを踏む訓練を行うことで、共感を代替する生きる力をつけられると思うのです。