ザトウクジラがジャンプ(ブリーチング)してカヤックに衝突する動画があります。
カヤックに乗っているのは、トム・マスティルという映像作家と友人のシャーロット。幸いにも、2人は無事でした。
この動画はホエールウォッチング船に乗っていた人が偶然録画したものです。
注意して聞くと、“I got it, I got it on video!”(やったぞ、撮れた!)とか“The kayak, the kayak!”(ねえカヤックは? カヤックはどうなったの?)という男女の声が聞こえます。
この動画はすぐにYoutubeにアップされました。
その反響は凄まじく、さまざまな新聞、雑誌、テレビ番組で取り上げられ、ネットのネタになり、日本のクイズ番組の問題にもなったそうです。
ある日、マスティルの友人でクジラの解剖学者でもあるジョイ・ライデンバーグが彼にメールを送ってきました。そのメールにはこんなことが書いてありました。
「あなたたちが助かったのは、クジラがぶつからないように配慮したからでしょう」(p. 33)
クジラにどうしてブリーチングしたのか聞くことはできませんが、という言葉と一緒に。
これが、マスティルにとっての「クジラをめぐる冒険」の始まりでした。
昨年11月に刊行された訳書『クジラと話す方法』(柏書房)はこんなふうに始まります。
訳書は400ページ弱とかなり長いですが、クジラの生態から「クジラ版のグーグル翻訳」の開発するプロジェクトまで幅広いテーマを扱っています。
「何か面白い本がないかな」と思っている人に手にとっていただけたらうれしいです。
この本については、もう少し書きたいことがあるので続きは別の記事にします。