ファーストシーンのバスの中の描写は、これから語られる物語の闇の深さを暗示するようでなんとも不気味は雰囲気を醸し出しています。
「悪意」でも「善意」でもない、人が知らず知らずのうちに犯してしまう「愚行」を週刊誌記者田中武志(妻夫木聡)が1年前の一家惨殺事件の取材を通して赤裸々に炙り出しいく。
理想的とも思われていた夫婦田中浩樹(小出恵介)と夏原友李恵(旧姓)(松本若菜)はなぜ殺されてしまったのか・・・・。
彼らの学生時代や新入社員時代にまで遡る友人やかつての恋人など関係者からの証言は、夫婦の愚行のみならず、証言者達の愚行についても正否を観るものに問いかけます。
自分をいい人と見られたいがための行動。
そしてそれを見透かされると妙に後ろめたい気分になり。
幸せな生活を送るために元カノと復縁してまで、そのコネを利用しようとする。
遊び相手ならいい、でも恋人としてはちょっと・・・。友人同士共謀しての企み。
大学内で存在している内部性(中高より一貫で入学した学生)と外部性(大学からの学生)の間の溝や格差。その格差から抜け出すための卑劣な行動。
傍観と暴露。
一方で、田中の妹光子(満島ひかり)は、育児放棄の疑いで収監中の身です。
母親による育児放棄や父親からの性的虐待などを少女時代に経験しますが、そんな時に唯一味方になり助けてくれたのは兄の武志でした。
希望に胸を膨らませて入学したはずの大学時代もある女性の「愚行」でずたずたにされます。
まるで感情を失くしてしまったような現在の抑揚の無い表情がこれらの過去を物語っています。
誰もが日常の生活の中で抱くであろう悪意や善意からの行動が、直接的にまたは間接的にめぐりめぐって他人の人生に影響を及ぼしていく様を、まったくの他人事と言い切れる人が果たしてどれだけいるだろうか。
愚行録 (2017年 日本)
原作 貫井徳郎
監督 石川慶
脚本 向井康介
出演 妻夫木聡 満島ひかり 小出恵介 臼田あさ美 市川由衣 松本若菜 中村倫也
眞島秀利 濱田マリ 平田満
