何回やったって
試合前は恐怖に緊張する
日常の生活から
試合が決まった瞬間
会ったこともない
名前も顔も知らない
見ず知らずの人と人前で殴り合い蹴飛ばしあう
時間と場所を決められて
人前で
金をもらって殴り合う
尋常じゃない世界にいると確認する
それに向かって準備をする
心の準備が先なのか
体の準備が先なのか
そんな事に興味すら湧く訳がない
心も体も準備はいつでもできている
見ず知らずの人と対戦することを命じられ
見ず知らずの人を全力で殴るためだけに身体を鍛え上げる
見ず知らずの人を全力で蹴り飛ばす為だけに走る
見ず知らずの人の前で互いに殴り合って称賛される
それが
キックボクシングだ
そんな事を
20年やりつづけている
本当にわけのわからない生き物だ
このキックボクサーは
通常の日常が非日常とシンクロはなぜかしない
僕にとってあの場所は特別だ
特別な時間で
特別な人間だけが上がれる場所だと思っている
人前で赤の他人と殴り合うのを見て喜んでもらう競技
その競技を選ぶ理由なんて人それぞれだ
女にもてたい
かっこいい
喧嘩が強くなりたい
どんな理由がきっかけだって構わない
リングに上がる以上
子供だとか女だとか
そんなことは関係ない
心と体の準備は
自分自身で自分自身に打ち克つしかない
こんなもんでいい
そう思った時点で
自分自身に打ち勝てるわけがない
怖いとか
痛いとか
どこか別なところに置いてこい!
普通にないことをするのに普通の練習で良いわけがない
もう限界だ
そう思うそれ以上に行けない者に
覚悟のない者に
リングに上がる資格なんてない!
今年
もう一度
61回目のリングに
60回分の覚悟をもって挑む。
マサル