努力論 幸田露伴有福は祖先の庇護にあるので、尊むべきところはない。惜福の工夫あるに至って、人やや尚(たっと)ぶべしである。分福の工夫を能くするに至って、人いよいよ尚ぶべしである。能く福を植うるに至って、人真に敬愛すべき人たりというべしである。 福を有する人はあるいは福を失うことあらん。福を惜しむ人はけだし福を保つを得ん。能く福を分つ人はけだし福を致すを得ん。福を植うる人に至って即ち福を造るのである。 植福なる哉。植福なる哉。 この境地に達する日は来るのだろうか。