家に戻ってもずっとたけしさんを続けている博士・・
しかも、全く上達しない。
似てくるならまだしもずっと聞こえるか聞こえないかの絶妙に嫌な声で本当に気がまいってしまった。
僕は博士の書斎に、博士はご家族がいる居間に上がって行った。
「コノヤ・・ゥ」
居間の方から、かすかにモノマネが聞こえてくる。家族にまであの調子で続けているのか!?
僕は、これはたけしさんのモノマネで何故これをやっているか理解しているからまだいいが、突然現れた一家の主がこんな状況だったらご家族は皆パニックになってしまうだろう・・
博士は仕事を家庭に持ち込むタイプなのか・・
などと心配していると居間から恐ろしい言葉が飛んできた。
「ガン太来いコノヤロウ・・オマエモこっちキテやれ」
ええ・・マジか・・博士のご家族の前でやれと博士がおっしゃっている・・
しかし、言われてしまっては仕様がない、先輩の命令は絶対である。
意を決して居間を覗きこむと・・そこには「バカヤロ・・イイ汗カイタコノヤロ」と相変わらずの博士・・
全体を見渡す・・恐ろしいほど家族に無視をされている・・まったく、相手にされていないのだ。息子、娘は背を向けてテレビを見ている・・
その感じを見ると何ともいたたまれなくなった。これでは博士が余りにも可哀相すぎる!
僕は何故か同情と共に焦りのような感情があふれてきて、何とかしようと、何とか子供たちを振り返らせようと“スーッ”っと息を吸い全力でたけしさんのモノマネを始めた!
「この野郎!!ふざけんじゃないよ馬鹿やろう!!おい!この野郎」
博士も負けじと続ける!
「コノヤロ」
「冗談じゃねえよこの野郎!!!」
「オネエチャンコノヤロ」
「やらすんじゃないよ!このやろう!!」
・・3分くらい続けては見たけれど、全く子供たちは振り返らなかった。
「コノヤロウ・・コノヤロウ・・」
博士は壊れたオモチャの様に相変わらず似ていないたけしさんを続けているので、僕はそっと「お疲れ様です。」と言って博士の家を後にした・・
帰りの自転車、頭の中をずっとあの声が頭の中をグルグル回っていた。
夢に出てこなければいいが・・
つづく