悪い夢の中をさまよっているような状態の中、窪川さんが現ベタをスタジオに届けてくれた。2階ではまだ撮影中だったが、気にせず3階の踊り場で窪川さんと一緒に上がりを確認した。見た瞬間「眠い上がりだった」。窪川さんに「もっと固くてよかったのに、黒ももっと引き締めてほしかった」と文句を付けながら、大量の現ベタを先ずはちゃんと写っているかどうかを手早く確認した。「良かった~問題ない」すぐ隣には小泉もほっとした表情でいつものスマイルで胸を撫で下ろしていた。それから間もなく、主藤と中川が来て「かっこいいじゃん」と言ってくれた。嬉しかった。窪川さんもほっとした顔で僕を見ながら、プリントのことを聞いて来た。大村に頼もうと思っていたが、何かめんどくさくなり、セレクト後に窪川さんにプリントもお願いすることを約束した。みんなが僕のまわりを囲む中、白いダーマートでコンタクトシートにセレクトしたコマにマーキングした。この行為はいかにも写真家ぽくて好きな時間だった。いつものポジにマーキングするのとは違って、写真にダイレクトにマーキングするのがかっこ良くて、時たま柔らかい布で訂正するために消す時も自分がまるでプロ写真家に成りきるには十分な行為だった。自分に酔いしれながらすべてのコマを、撮影中のことを思い出しながら丁寧にゆっくり見た。ひどい頭痛も良い写真が吹き飛ばしてくれた。みんなに鍛えられたせいもあって僕はセレクトがとっても早くできるようになっていた。もちろん撮っている時の感触が良い物を先ずチェックして、問題が無ければそれを先ずは候補にして、1カットに付き多くとも三枚ぐらい選び、後はページ構成を考えてそれらを組み合わせる。流行通信の仕事を頻繁にすることによって写真を撮ることもとっても大事だが、生かすも殺すも構成次第ということが、雑誌の上がりを見ることによって学んだ。初めてのモノクロ撮影は緊張したが、楽しさは新鮮なこともあって倍増した。もう一度ゆっくり確認してから、牧野さんには内線することにして一人ニヤニヤしながら自分の上がりに満足しながら、何度も何度も撮影状況を思い出しながら見ていた。