ここ数年、総合格闘技の世界に柔道の金メダリストが続々参戦してきてる。

でも、相手がいくら柔道とは違い、道衣なしの裸の選手とはいえ、柔道の金メダリストが総合格闘家(特に柔術家)を相手に、寝技で負けるだけやなく、何もさせてもらえなかったり、挙句の果てに相手が自ら寝転んで、「寝技で勝負しよう!」と挑発されるという屈辱的なシーンを見ることもある。

昔は、相手を寝かしてしまえば柔道が最強と言われてた。

柔道部出身の俺としては凄くショック。

本来の“相手を極める”格闘技ではなく、“いかにポイントを稼ぐか”のスポーツになってしまった現代の柔道。それは、最近の柔道の審判法が、国際審判におされているのが原因と聞く。高校や中学校の試合の時でも、最近では、寝技の攻防が少しでも止まったら即“待て”で試合を止めて、再び立ち技勝負にさせる傾向があるらしい。

数年前、谷亮子選手と仕事をした時にもそんな話をしたら、谷選手も「私も寝技が好きなんで、もっとやりたいんですけどルールが…。」と言ってはった。

寝技で不利な体勢になっても、亀の状態になっとけば、審判が「待て」と言って助けてくれる。そんな今のルールでは必然的に普段の寝技の練習量は減るはず。

“強さ”を目指す学生が柔術やレスリングの道場に走り、ただでさえ減ってると思われる柔道人口が更に減ってしまいそう。

“何でもありルール”の総合格闘技のリングでは、最強の幻想があったプロレスラーがボコボコにされ、寝かせれば最強と言われてた柔道家が寝技で極められ、打たれ強いと言われていた相撲取りはパンチで簡単に倒れ、一撃必殺と言われてたボクサーはローキックで蹴られまくって自分の間合いに入れずパンチも当たらん。

総合格闘技の世界では、幻想がドンドン現実化されていく。

その切なさも、総合格闘技の魅力ではあるけど…。