10年前、俺には好きだった彼女がいた。彼女は同じ短大の同級生で、卒業して2ヶ月後にフラれて別れた。付き合ったのはほんの半年。

その別れる2ヶ月前に卒業した俺達は、友達2人と計4人でタイムカプセルを埋めた。10年後のそれぞれに手紙を書き、10年後の自分の姿を予想して書き、タイムカプセルに入れて埋めた。

彼女とは「もし10年後に別れてたとしても、これだけは空けに来よう」と笑いながら約束した。

今年、2000年2月7日。そのタイムカプセルは、10年ぶりに掘り出された。俺にとって、ここまで意味を成すタイムカプセルになるとは思ってなかったんやろう、保存状態が悪かった。おかきとか入ってる、でかいドラム缶に入れただけやったんで、サビて水が入り、字はにじんで、便箋はサビで茶色く染まっていた。1枚1枚、ドライヤーで乾かしながらの復興作業は2時間にも及んだ。友達が俺に書いた手紙の中には、「10年後はテレビで漫才師してると思う」というのもあった。しかし、友達2人の手紙は何とか読めるのに、俺と彼女の手紙はほとんど読めない状態になっていた。俺はアホなことに便箋を小さく、ややこしくたたんで引っ付いてるし、彼女のはすごく薄い便箋に鉛筆で書いてるんで、ボロボロで字も薄くなって、読めなくて全滅。神様はよう考えとる。

でも、俺は彼女に書いた手紙の内容を今でも覚えてる。(タイムカプセルの意味がない)

「10年後、俺らはたぶん別れてると思う。俺が振られて…。君は結婚して子供もおると思う。でも、これを空けてる今も、たぶん君のことがまだ好きやと思う」

そんな彼女は3年ほど前に結婚し、もう子供もいるらしい。

そしてこの日、その彼女だけが来なかった。

でもやっぱり彼女が俺に書いた手紙に何て書いてたか見たかったなぁ。気になるわぁ。くそぉ~!一応、コピーしとったら良かった。(タイムカプセルの意味がない)

今になって考えてみれば、もしあの子にフラれてなかったら、俺はたぶん芸人になれてなかったような気がする。失恋バンザイ!


♪いつまでも忘れない 今でも目をこうして閉じれば19のままさ でも僕ら もう二度とあの日のきらめき この胸に取り戻せない♪


『19のままさ』 浜田省吾