カンボジア
ジャングルに古びて形をとどめたるバイヨン寺院の繁栄の跡
宗教の違いに破壊されし跡首なき像に面なきレリーフ
楽しげに手足を曲げたアプサラス城壁・柱に刻まれて踊る
十六の四面仏塔祠堂囲むアンコール・トム バイヨン寺院
「クメールの微笑み」我らを包みたり祠堂の闇より仏塔拝す
祠堂にいりて拝する観世音菩薩平和を祈る永久の微笑み
十六のの四面仏塔雨季の空に古びし都城香売る嫗
写真好きのガイドは時折手招きす遺跡の景と我らを写す
ベトナム・ハノイ
警笛を互いに鳴らし走りゆく信号なくも不自由さ見えず
灼熱のハノイの町は美しきオオバラサルスベリの紫の花
街中を走る線路に腰下ろす老人二人我らを見ており
あちこちの日陰に開く茶の露店茶をすする男達空ろに見える
乗れるだけ人乗せバイクは走りゆく背筋伸ばして警笛鳴らし
恋人を家族を乗せてバイクゆく生活の様手に取る如し
ハロン湾目指す道中は夾竹桃花の街道五月の青空
農耕牛数匹群れて道渡るバイクも車も暫しストップ
柵もなく繋がれもせず農耕牛田圃に生える草食みている
道端に荷車止めてフランスパン メロンにスイカ売る人等おり
柱を組し後は煉瓦積む玄関があり突き当たりに窓
狭き地にうなぎの寝床というらしき4・5階建てのベトナムの家
側面はどこの家にも窓はなし玄関がありつきあたりに窓
風通しの良き家なれど玄関に涼とる家族・食事する人
ハロン湾
海水や風雨さらされ造られしハロン湾岩山遥かに見ゆる
バイチャイ港クルーズ船に乗り込めば海風沖より我らを誘う
シーズンの盛りを過ぎてクルーズ船船員五人客七名
船頭の竜の彫り物口開ける遥かな海原浮かぶ島影
微々たるも日銭を稼ぐ心意気大いに見せてワイン勧める
チリワイン ベトナムワイン置きあれど盛んに薦めるチリワイン
貸切の状態で乗るクルーズ船海鮮料理のもてなし旨し
海上に暮せる人等の小船来て果物を売るは幼き子ども
お河童の黒き瞳の少女来てバナナ持ち上げ「ニドル、ニドル」と
「二ドル」の他に言葉を語らない少女の瞳の深き意味合い
言葉に詰まりし夫はバナナ求む去りゆく舟のおうなの微笑
ユネスコがつくりし学校海に浮かぶ五年生まで学べるらしき
海上に生簀をつくり魚介売る女は働き男は水煙草
ひたむきに働く女性の姿多しベトナム男性遊んでばかり
ハロン湾に恋がれし人を思いつつベトナムの人のもてなし味わう
日本の企業の看板あちこちに大きくたてりベトナム空港
宵闇に降り立つ空港灯火の優しき光カンボジヤ空港
空港の外壁チラチラ動くものヤモリがツーと明かりに動く
アンコール・ワット
古典抒情詩「ラーマーヤナ」の物語絵巻のごとき壁画をたどる
遠方に雷響く音聞え来る足早に巡るアンコール・ワット
魔王の計らいの如く雷響く「ラーマーヤナ」の壁画を巡る
回廊の壁一面を埋め尽くす絵物語のレリーフ浮かぶ
細やかな浮き彫り装飾に見入りたり猿の兵士の多彩な動き
女神の豊な胸は黒光るそっと触れたる旅人の思い
中央祠堂へ向かう石段は斜度七十度神々の域
三十五段急峻な階上り詰めれば中央祠堂更に聳える
国王のスールヤヴァルマン祭りたる寺院の祠堂は空に聳える
足半分かかるくらいの急斜面 祠堂への石段天への景色
ヴィシュヌ神スルーヤヴァルマン王様を一つにするべく祠堂は高き
雷響くアンコール・ワットに雨宿り古びし遺跡に雨滲み来る