ナス肉定食と南風
地元で評判の定食屋さんが突然店を閉めたー。
自炊を心がけるようになり、ここ半年は行ってなかったのだが
間違いなく、近所で一番旨く、めちゃめちゃ繁盛している様子
だった。
「へいらっしゃい~っ!」と威勢よく、本人がスタミナ定食の
ようなオジサンが作る「茄子肉炒め定食」は、数週間食べないと
禁断症状を起こすほど美味!
お店は、どこにでもある定食屋さん風で、麺類、丼もの、定食系
のメニューが短冊に書かれ、壁いっぱいに貼られてある。
お店は完全家族経営。厨房で中華鍋を操る料理長兼店主のおじさん
と、控え目な奥さんはレジ担当、料理を運んだり厨房のお手伝いを
するのが高校を卒業したばかり風で、目下跡継ぎ修行中の息子さん。
「知らなかったし...。」
まさか閉店するなんて思ってもいなかったので、閉ざされたシャッター
に「貸店舗」の紙切れが揺れているのを見て、軽いショックを受けていた。
(なんだ~。閉まるんだったらもっと来ればよかったな~)
などと独り言を言いながら、地元一番の人気店の突然の閉店に、
(なぜ閉めたんだろ?)という多少の疑問を感じていた。
先週、行きつけの美容室で全貌を聞かされ、愕然としたー。
「亡くなられたんですよ。息子さん。」
「え!? なんで?」
「風邪をこじらせ、病院にも行かず放っておいたみたいです」
「...そんな。」
「おじさんとおばさん、辛くて店開けられない程落ち込んで、
引っ越そうとしていたようですよ。」
(そりゃ無理もない...)
機敏なタイプではなく、どちらかというと、鍛え甲斐のあり
そうな今時の若者だったが、おじさんから教わる客商売の
いろはを、慣れない言葉遣いから一生懸命叩き込まれていた
修行姿を思い出す。
「でもね、つい先日、また開店したんですよ。」
「え!!」
「詳しい事はわからないですけど、おそらく近所のお馴染みさんや
商店街の仲間達から励まされ、『もう一度やろう』って思い直したんじゃ
ないですかね。」
今週末、久しぶりにおじさんの店に行ってみた。
看板にもちゃんと灯りが入っている。
「へいらっしゃい~っ!」威勢のイイおじさんの声と、テーブル席
を埋めてるお客さんの数は以前と一緒だったけど、振り返ったおじさん
の身体は以前の半分になっていた。
そして...やはり見慣れた厨房の風景に一人足りない。
「何にしましょう?」
「えっと...茄子肉炒め」
「あいよーっ!」
カウンターに座り、ラーメンスープの寸胴から沸き上がる
湯気越しにおじさんの後ろ姿をじっと見ていた。
人は皆、哀しみの跡を星空に埋めてゆく
誰かに教えられた仕草、なぞっても変われなくて...。
南風に揺れた恋、すがる思い断ち切れなくて
まだ君を捜している。
砂まじりの焦げた夢、明日への道しるべになれ
まだ、夏を終わらせはしない (M's Kitchen「南風」より)
「はい、ナス肉定食。」
おばさんが運んでくれた茄子肉炒めは、前とちっともかわらない。
(美味しいよ、おじさん!おばさん!)
凄いよ!!凄すぎて、涙が出る。
どんなに辛かったことだろう。
どんなに苦しかったことだろう。
でもこうやってまた...
心から励ましの言葉を掛けてあげたかった。
でも、どんな言葉も安っぽく感じられ、何も言えなかった...。
「これこれ。食べたかったんだよね~。」
「へへへ。 好きだね~、ナス肉。」
(やべぇよ。笑顔見せられると、しょっぱくなるじゃねぇか!)
俺はこんなおじさんになりたいって思うー。
M's Kitchenも多分こんな店になりたいー。
「ごちそうさま」
「あいよ~。また来て頂戴ね!」
(もちろん! また来るさ!!)
8月7日ー。
少しでもこんなおじさんに近づけるよう
力いっぱい歌おうと思ってます。
*注意)
なお、筆者は上記文中にある「M's Kitchenもこんな店
になりたい」に関し、M's Kitchenの閉店の危機を暗示
するつもりも、鍛え甲斐ある中途半端な若さを主張する
鍵盤担当のメンバーを暗示するつもりもないことを、
ここに付け加えておきますので、あしからず。
自炊を心がけるようになり、ここ半年は行ってなかったのだが
間違いなく、近所で一番旨く、めちゃめちゃ繁盛している様子
だった。
「へいらっしゃい~っ!」と威勢よく、本人がスタミナ定食の
ようなオジサンが作る「茄子肉炒め定食」は、数週間食べないと
禁断症状を起こすほど美味!
お店は、どこにでもある定食屋さん風で、麺類、丼もの、定食系
のメニューが短冊に書かれ、壁いっぱいに貼られてある。
お店は完全家族経営。厨房で中華鍋を操る料理長兼店主のおじさん
と、控え目な奥さんはレジ担当、料理を運んだり厨房のお手伝いを
するのが高校を卒業したばかり風で、目下跡継ぎ修行中の息子さん。
「知らなかったし...。」
まさか閉店するなんて思ってもいなかったので、閉ざされたシャッター
に「貸店舗」の紙切れが揺れているのを見て、軽いショックを受けていた。
(なんだ~。閉まるんだったらもっと来ればよかったな~)
などと独り言を言いながら、地元一番の人気店の突然の閉店に、
(なぜ閉めたんだろ?)という多少の疑問を感じていた。
先週、行きつけの美容室で全貌を聞かされ、愕然としたー。
「亡くなられたんですよ。息子さん。」
「え!? なんで?」
「風邪をこじらせ、病院にも行かず放っておいたみたいです」
「...そんな。」
「おじさんとおばさん、辛くて店開けられない程落ち込んで、
引っ越そうとしていたようですよ。」
(そりゃ無理もない...)
機敏なタイプではなく、どちらかというと、鍛え甲斐のあり
そうな今時の若者だったが、おじさんから教わる客商売の
いろはを、慣れない言葉遣いから一生懸命叩き込まれていた
修行姿を思い出す。
「でもね、つい先日、また開店したんですよ。」
「え!!」
「詳しい事はわからないですけど、おそらく近所のお馴染みさんや
商店街の仲間達から励まされ、『もう一度やろう』って思い直したんじゃ
ないですかね。」
今週末、久しぶりにおじさんの店に行ってみた。
看板にもちゃんと灯りが入っている。
「へいらっしゃい~っ!」威勢のイイおじさんの声と、テーブル席
を埋めてるお客さんの数は以前と一緒だったけど、振り返ったおじさん
の身体は以前の半分になっていた。
そして...やはり見慣れた厨房の風景に一人足りない。
「何にしましょう?」
「えっと...茄子肉炒め」
「あいよーっ!」
カウンターに座り、ラーメンスープの寸胴から沸き上がる
湯気越しにおじさんの後ろ姿をじっと見ていた。
人は皆、哀しみの跡を星空に埋めてゆく
誰かに教えられた仕草、なぞっても変われなくて...。
南風に揺れた恋、すがる思い断ち切れなくて
まだ君を捜している。
砂まじりの焦げた夢、明日への道しるべになれ
まだ、夏を終わらせはしない (M's Kitchen「南風」より)
「はい、ナス肉定食。」
おばさんが運んでくれた茄子肉炒めは、前とちっともかわらない。
(美味しいよ、おじさん!おばさん!)
凄いよ!!凄すぎて、涙が出る。
どんなに辛かったことだろう。
どんなに苦しかったことだろう。
でもこうやってまた...
心から励ましの言葉を掛けてあげたかった。
でも、どんな言葉も安っぽく感じられ、何も言えなかった...。
「これこれ。食べたかったんだよね~。」
「へへへ。 好きだね~、ナス肉。」
(やべぇよ。笑顔見せられると、しょっぱくなるじゃねぇか!)
俺はこんなおじさんになりたいって思うー。
M's Kitchenも多分こんな店になりたいー。
「ごちそうさま」
「あいよ~。また来て頂戴ね!」
(もちろん! また来るさ!!)
8月7日ー。
少しでもこんなおじさんに近づけるよう
力いっぱい歌おうと思ってます。
*注意)
なお、筆者は上記文中にある「M's Kitchenもこんな店
になりたい」に関し、M's Kitchenの閉店の危機を暗示
するつもりも、鍛え甲斐ある中途半端な若さを主張する
鍵盤担当のメンバーを暗示するつもりもないことを、
ここに付け加えておきますので、あしからず。