煙草2本分の再会
「あ、来た!なんか遅くねぇ?」
「あのな、俺だって暇じゃないんだから、いつも
命日に来れるとは限らないの!」
「もう煙草って、簡単に自動販売機で買えないんだぜ」
「...ふう~ん」
「饅頭は親父さんのぶんだからな。」
いつものように、宿河原駅前でセブンスターを一箱購入。
家から持参した缶ビールと柿の種のおつまみパック
やや非常識であるが、年に一度再会する友人への
手土産はずっと変わってない—。
2つ年上だったマサは決して長い付き合いではなかった。
出会ってから別れるまで、3ヶ月程度の付き合い。
でも、彼から教わった事は全て大事なものだった。
バイクが好きで、乗り方を教えてもらい、シャネルズが好きで、
よく一緒に歌った。煙草の吸い方も誰よりもカッコよかった。
好きな女の子もかぶっていたけど、彼には内緒にしていた。
...そして何より、彼は友人の死がどれだけ辛く悲しいかを
当時14歳の私に教えてくれた。
悲しくて、辛くて、どうしようもなかった—。
中学3年生1学期の中間テスト前の朝、突然の訃報が入り、
両親に頼んで、学校を休み、葬式に参列した。
「しっかり、お別れしてきなさい。」
私は今でもこの事を両親に感謝している。
傘にうるさく打ちつける雨音で、何も聞こえないような大雨。
駅から程遠くない住宅地の坂にはマイクロバスが
2台止まっていた。バスから彼の家に続く坂道には、
同級生達がみんな肩を揺らして泣いている—。
…今でもはっきり覚えている。
私は今でもこの事だけは神様を許さない—。
なぜ?どうして正道が死ななきゃならなかったの?
あんないい奴を、何故ー!
信号無視で横から突進してきた軽トラに撥ねられ、
即死だった友人の周りにもたらされた悲しみはとても大きく、
それまで幸せだったマサの家族に与えられた悲しみ、
幼い私には耐えられない程だった...。
線香代わりの煙草に火を点け、缶ビールを開ける。
「なぁ、もし生きてたら、こんなに長く付き合っていたかな?」
「...どうだろうなぁ...」
煙草一本吸い終わった頃に立ち上がる...。
「じゃ、また来年な!」
「え~、もう帰るの?もう一本吸ってけよ~。」
毎年煙草二本分だけの間、彼と話をしている。