『リートの傑作を、歌劇仕立て』
と銘打った舞台は、歌手とダンサーが
各一組ずつで、フルコンサートピアノを囲む立体的な舞台セット。「歌曲集」は46曲。順番を入れ替えると見事な物語に。
Auch kleine Dinge können uns entzücken (小さいものもまた、私たちを本当に 魅了できるのだ)※プログラムの演出ノートより
と縦に配された文字(このフレーズに この舞台に懸ける想いが)の下にテーブル、両端には家の食堂にありそうな椅子、 歌手やダンサーが歌や踊りで物語を進行してゆく。女性(そういえば名前がない)の衣装は育ちの良さを自然に語りかける品の良いゆったりとしたシンプルなワンピース。心や幸せを象徴する小道具は箱。 |
巧みな照明は時に、くだんの
舞台中央の文字を蛇にもする。
昨年6月、「二期会サロンコンサートVol.200 フーゴ・ヴォルフの世界」で、今回ご出演のバリトン小森輝彦さんが、ソプラノ佐々木典子さんとお二人でコンサートでなさった時に聴いて、いつかまた
これをぜひ舞台作品として観たいと強く
思いました。
念頭に作曲されたのではなかったことが、むしろ驚きで、こういう形での演奏はあとからされるようになったとのことです。
二期会サロンコンサートでも、
伴奏者としてご出演の井出德彦さんが
今回もピアニスト。
『思春期の夢みがちな少女と不器用な少年が出会い、恋に落ちる。…』展開は
グランドオペラのそれに匹敵し、ピアノは
雄弁に心情を奏で、時に指揮者でありオーケストラのようでもあり、また歌い手のようであり、今日はピアノのオペラだ、と思いました。
後半に音楽の全てが止み、
無音の演技のみのパートがあり、
(ホールの空調音だけが聞こえてくる)
そこでは観客の全てが息を呑み、
音の鳴っていない時が音楽でした。
これは演出の巧みかと!
あそこがこの舞台で一番の(音のない)
聴かせどころだったのかも知れません。
さて、率直な感想は、ダンサーも歌い手もそれぞれ熱演で、実は観客として意識や視線が分散してしまいました。私がメモリ不足だったかも。オペラでもありながら一方バレエのようでもあったのが興味深いです。仮設の舞台による歌い手の足音、物を落とした時の乾いた音、ダンサーがジャンプをしたときなどにするかなり大きな音など、音量というより音質が、時に音楽を遮ったように感じた、などどうるさいこと言う私が一番うるさいかも知れませんが。
ヴォルフ作曲「イタリア歌曲集オペラヴァージョン」のト書き付きオペラ楽譜が出るくらいに、室内オペラ作品として定番になってほしいです。
男性(こちらも名前がない)を歌われた
小森輝彦さんはドイツ宮廷歌手で言うまでもなくリートのスペシャリスト、オペラは日本でも数々の大舞台で常に主役、さらに大学教授で校長先生!という凄い方が演じる夢見る少年姿を二度見三度見。カーテンコールで素顔に戻られたときに、別人のようだったと思いました。
おまけ。
興味深い論文を発見しました。
またこちらの論文も。