4月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4074
ナイス数:188

ローマ人の物語 (12) 迷走する帝国ローマ人の物語 (12) 迷走する帝国感想
235年~284年の約50年間に、26人もの軍人皇帝が登場しては消えた「三世紀の危機」と呼ばれた時代。帝国の衰退なのか周囲の蛮族たちの相対的な勢力伸長なのか、帝国の防衛線は絶えず外敵から攻撃を受けた。実力で推戴された皇帝たちだが、反面、将士たちとの距離が近かったために容易に暗殺されることにもなった。世の乱れから古代からの神々を信じられなくなった人たちの間に信徒のコミュニティがしっかりしていたキリスト教が浸透していった時代でもあった。
読了日:04月02日 著者:塩野 七生
月の立つ林で (一般書)月の立つ林で (一般書)感想
仕事に悩み看護師を辞めた独身女性、お笑い芸人を目指したが芽が出ない男、大事な娘に突然嫁に行くと言われて焦る整備工場のオヤジ、親が離婚して母子家庭で育った18歳の娘、結婚生活との両立に悩むアクセサリー作家…それぞれ悩みはいろいろだけれど、周りの人たちは自分で思い込んでいるほど冷たくはないし、人の縁も見えないところで繋がっているんだよ、というオムニバス。通奏低音は、「ツキない話」というポッドキャストだが、これもフィナーレの中に溶けて全体で一つのお話のようになって終わる。見えない新月から月が立つっていいね。
読了日:04月05日 著者:青山美智子
ローマ人の物語 (13) 最後の努力 (ローマ人の物語 13)ローマ人の物語 (13) 最後の努力 (ローマ人の物語 13)感想
ローマの平和に彩られた五賢帝時代の後の蛮族侵入に悩まされた三世紀の危機を経て、ローマ帝国はディオクレティアニス帝、コンスタンティヌス大帝によって延命することができた。ただし、ローマはローマ市民と元老院に委嘱された元首としての皇帝にではなく、専制的な君主としての皇帝に支配され、職業が固定され、重税によって中流階級が没落する帝国となった。コンスタンティヌスはまだ少数派だったキリスト教徒に便宜を図り、皇帝権力の正統化に利用した(と塩野氏は考えている)。
読了日:04月06日 著者:塩野 七生
十津川警部、廃線に立つ (角川文庫)十津川警部、廃線に立つ (角川文庫)感想
短編集だが、どれもドラマ化したら面白いだろうなぁ、と思える作品(個人的には渡瀬恒彦さんの十津川警部が思い浮かぶ)。西村京太郎さんは、やはり凄腕のストーリーテラーだった。
読了日:04月09日 著者:西村 京太郎
ローマ人の物語 (14) キリストの勝利ローマ人の物語 (14) キリストの勝利感想
コンスタンティヌスによってキリスト教の国教化への道が拓かれ、テオドシウスによって、それが完成した。この二人が後世「大帝」と尊称される由縁である。その間に活躍し古来の神々を復興しようとした哲人にして「背教者」たるユリアヌス帝が不慮の戦死を遂げず、永く執政していたらヨーロッパの歴史は変わっていたかも知れないが…。テオドシウスの治世の下でローマ帝国の一神教による政教一致が進んでいった。
読了日:04月10日 著者:塩野 七生
三体三体感想
久しぶりに本格的なSFを読んだが、スケールが大きいストーリーだった。著者は、政治的な主張があると思って欲しくはなくて、エンターテインメントとして読んでほしいらしいが、少なくとも文明批評にはなっている。文革ー科学者に降りかかる災難ー三体という謎のVRゲームのそれぞれに何の関係があるのか、と思うが話が繋がっていくのである。これが三部作の第一作ということだが、もうお腹いっぱいである。
読了日:04月12日 著者:劉 慈欣
ローマ人の物語 (15) ローマ世界の終焉ローマ人の物語 (15) ローマ世界の終焉感想
5世紀に都市ローマは蛮族に劫掠されたものの持ち直したが、476年に蛮族出身のオドアケルによって皇帝が廃位され西ローマ帝国は静かに滅んだ。その後しばらくは蛮族とローマ人は平和に共生していたのだが、東ローマ帝国のユスティニアヌス帝が蛮族からのローマの解放を企てたことが却ってイタリアを荒廃に追いやることになった。その後、イスラム教徒たちの勃興によって地中海は内海ではなくなってしまった。15巻7,713ページの掉尾を飾る本巻では皇帝たちよりもスティリコ,ベリサリウスの二人の総司令官に魅力を感じた。
読了日:04月14日 著者:塩野 七生
ローマ亡き後の地中海世界(上)ローマ亡き後の地中海世界(上)感想
西ローマ帝国が滅亡した後の地中海周辺はサラセンの海賊たちの略奪に数百年間も曝された悲惨な時代だったことを初めて知った。イスラム世界について、ヨーロッパや東アジアのような国家を想定することも、啓典の民としてユダヤ教徒やキリスト教徒がある程度は尊重されたと思い込むことも危険だと思った。本書では簡単にしか触れられていないが、ヴェネチアなどのイタリアの海港都市国家が興隆したことと十字軍という形でキリスト教徒たちの失地回復が試みられたことは、この時代のヨーロッパ世界の歴史にとって重要である。
読了日:04月18日 著者:塩野七生
ローマ亡き後の地中海世界 下ローマ亡き後の地中海世界 下感想
下巻も地中海をめぐってキリスト教世界とイスラム教世界の海戦の英雄たちの活躍が描かれる。本書では簡単にしか触れられていないレパントの海戦はクライマックスであり、それに先行した騎士団によるマルタ島の防衛戦も手に汗握らずにはいられない。ただ、レパントの海戦によるキリスト教側の 勝利の後もサラセンの海賊の劫掠は続いたのだった。やがて時代は地中海から大西洋に舞台が移り、キリスト教世界は大航海時代に飛躍していった。
読了日:04月23日 著者:塩野 七生
ギリシア人の物語1:民主政のはじまり (新潮文庫 し 12-46)ギリシア人の物語1:民主政のはじまり (新潮文庫 し 12-46)感想
ギリシャのポリス連合がペルシャの侵略に立ち向かって勝利したペルシャ戦争に多くのページを割いている。この戦争の経緯について詳説されているだけではなくスパルタの王政とアテネの民主主義政体それぞれの内実が学術書よりもわかりやすく説明されている。登場人物たちの中で特に印象深いのはサラミスの海戦の英雄だったテミストクレスである。史上初めて海戦で戦争全体の帰趨を決した、テミストクレスの先見性は特異でもある。彼はその後、政敵によってアテネを追われるが、変幻自在な身の処し方にも彼の天才ぶりが現れている。
読了日:04月27日 著者:塩野 七生
磯田道史と日本史を語ろう (文春新書 1438)磯田道史と日本史を語ろう (文春新書 1438)感想
いくつかの雑誌に掲載された著名人との対談を集めた本だが磯田氏の学識と聞き上手さが光る。特に堺屋太一・小和田哲男・本郷和人との信長と戦国時代をめぐる対談、斜め上からの発想に驚いた養老孟司先生との対談、近代史をめぐる半藤一利氏との対談が面白かった。各論では東日本と西日本の相違と補完関係や、幕末開国の時代から日本の対外拡張主義が始まっているという見方が特に印象深かった。
読了日:04月29日 著者:磯田 道史

読書メーター