川崎市の武蔵溝ノ口駅の近くに「溝の口野郎」というラーメン店があった。この地域で焼き鳥屋のチェーン店を展開している「たまい」グループのラーメン店として、鶏の唐揚げをウリにしていた。

 

 二郎系も似た面があるけれど、ジャンクでチープな味でお腹が満たされる店だったのでクセになり、勤めていた頃は時々利用していた。2016年にレシピの大幅な変更をしてからも心のなかでは応援していたのだが残念ながら5月8日に閉店していた。

 

  自分が初めてこの店を知ったのは20年くらい前だったと思う。その頃は、カウンターに唐揚(冷めていたが)、ニラキムチ、キクラゲが入った丼がドーンと置かれ、博多とんこつ風のラーメンにトッピングし放題という大盤振る舞いだった。

 

 世の中、まだデフレ真っ只中で景気が良い話はあまりなかった。周囲には、あまりラーメン店もなかったし、美味い店ではないけれど、そこそこ繁盛していた。けれど景気の回復とともに新しい店がオープンし次第に競争は厳しくなっていった。

 

 ちなみに、現在の溝の口駅近辺のラーメン店を検索すると、つぎのような感じになっている。再開発が進んだこともあって激戦区と呼んでも差し支えなさそうなくらい多くのラーメン店が営業している。

 

 競争が厳しくなって客を獲られてしまったのかなぁ、と感じるようになったのは2016年頃だった。お客の中には食べ放題をよいことにラーメンがまだ調理中なのに唐揚に手を伸ばす人もいたけれど、ついに唐揚の数量制限の貼り紙が…(ToT)。

 

 そうこうする内に同年10月に一旦、閉店して店の模様替えをした上で、博多とんこつ風から煮干出汁のラーメンに大幅なレシピの変更を行い、唐揚などのトッピング類も食券で購入するように変わった。

 

 再オープンした当初は、麺の替え玉一つ無料というサービスを行っていたがオペがたいへんなのか、注文時に麺二玉の特盛無料というサービスに変わった。これはこれで二人で一食をシェアしようという不心得な客が現れたりしたのだが。

 

 それからコロナ禍が襲って来たが、私はほとんどリモートワークに移行したので、この店を訪れる機会がなくなった。すると、どうやら二回目の模様替えをしたらしく、ニュータンタンメン(注)風のラーメン店に変貌していたようである。

(注)担々麺は練り胡麻に辣油が特徴の中華の麺料理だが、ニュータンタンメンとは塩味のかきたまスープに唐辛子で味つけされた川崎市のソウルフードである。誰が考えだしたものか不思議である。

 

 おそらく、二回目のレシピ変更を行ったのは昨年のことで、一年も経たない内に見切りをつけて閉店とあいなったようである。その後、溝の口に出かけていないので本当に廃業したのか見極めていないが、既に2ヶ月経っているから廃業したのだろう。

 

 ラーメンは国民食とも言われるくらい人気があるが個々の店にしてみると競争環境は厳しいようだ。周囲に新しい店がいろいろ進出して来た中で、溝の口野郎は独自の人気を確立できなかったということなのだろう。

 

 二郎系ラーメンのように威圧感を漂わせるものではなかったけれど、あのチープでジャンクでお腹が満たされる味が懐かしい。個人的には、もともとのレシピで値上げをしてくれても良かったのだが、店にとっては難しい判断だったと思う。