「「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」」




 最後のお客様を見送り、ホールには従業員だけが残った。


「はーい!みんなお疲れ様!終礼するから真ん中に集まってー」

「ゆうちゃん!終礼だって!いこ?」

「わ、ちょっと待って。これ片さないと」

「後で大丈夫だから!行くよー」

「もう…」




「…お、ゆうなぁ来たねぇ」

「茂木さん!今日はフォローありがとうございました!」

「いえいえ。丁度空いたところだったから!それにゆうちゃんがいち早く動いてたからフォローできたみたいなとこあるし」

「私は別に…」

「まーた謙遜して!良い働きしたから褒められる!これ当たり前!おわかり?」

「いやわかるけど、私は」

「そこ!終礼始めるって言ってるでしょ!」

「はーいごめんなさーい…とにかくゆうちゃんはえらい。なぁちゃん飼い主なんだからちゃんと褒めてあげるんだよ?」


「ンンッ!じゃあ終礼始めます!今日の売り上げは




…で、最後に。
ちょっと最近熱中しすぎるお客様が増えてます。
ありがたい話だけど、わたしたちは身体を売るお仕事じゃないです。線引きはしっかりして。
私もより確認強化をしますが、困ったらすぐ黒服呼んでください。
黒服のみんなも、今まで以上に巡回強化してください。私からは以上です。
他、共有事項、確認事項ある人いる?


……大丈夫そうだね!
それじゃあ今日はこれで!お疲れ様でした!」



「「お疲れ様でした!」」






終礼が終われば、あとは片付けを終わらせて帰るのみ。

片付けはキャストも黒服も関係なくみんなでやる。
それがこの店の決まり。

天狗にならずに、日々精進して仕事を務められるように。

お互いの仕事にリスペクトを持てるように。 

そのための全員での片付けだ。





「ずんちゃーん。これってどこに閉まったら…」

「あ、それは…って奈々さん!!包丁持ち方怖い!持つ時はちゃんと布巾で刃を包んで!」

「へ、ごめん!」

「もー!怪我したらどうするんですか!」

「すみません…」

「怪我してからじゃ遅いんですからね!…はい、これで包んで、あそこの棚に仕舞う場所あるんでお願いします!」

「わかった!」




「ゆうちゃん、これって」

「あ、貸して。やるよ」

「ありがとう!じゃあ、代わりにそれもらう!キッチン持ってけばいいよね?」

「うん。お願いします」

「はいはーい♪」




「ずんちゃん、ごめーん。これお願い!」

「はーい!茂木さん持ってきてくれてありがとうございます!」

「いえいえ…ってなぁちゃん。ここにいたんだ」

「はい!キッチンピカピカ大作戦中です!」

「おー。えらいね。ずんちゃんに迷惑かけてない?」

「大丈夫ですよ!!たぶん」

「たぶんてw」

「奈々さん、一生懸命にやってくれてるから助かってます!」 

「わーい!」

「でもなぁちゃんホールじゃなくて良かったの?てっきり"ゆうちゃんと一緒がいい!"って言うと思ってたのに」

「言いましたよ?そしたらゆうちゃんに、『片付け進まなくなりそうだからやだ』って…」

「あー…」

「ひどくないですか!?いくら私でもお片付けの時くらいはゆうちゃんから離れますよ!…たぶん!」

「たぶんって言っちゃってるじゃん笑」

「まあまあ。ほら、キッチンでちゃんとお片付けできたら彩希さんも信じてくれますって!」

「そうかなぁ」

「今日の奈々さんならバッチリです!ほら、残りも早く片付けちゃいましょ?」

「ずんちゃんが言うなら間違いないね!!わかった!がんばる!」




「あ、茂木。キッチン終わりそう?」

「もう終わるみたいだよ!…それにしてもずんちゃんもゆうちゃんもエース様の扱いがお上手で」

「へ?」

「なぁちゃん。一生懸命ずんちゃんの手伝いしてたよ?ずんちゃんも助かるーってすごい褒めてたから尚更やる気だしてた。どっちが飼い主なんだか笑」

「飼い主って…ちが、くはないけど」

「きゃー!ゆうちゃんがデレた!」

「デレてないし!!」

「はいはい笑じゃあ愛しの飼い主様お迎え行ってあげな?私はおんちゃんに報告してくるから!」

「茂木こそ、飼い主さんにしっかり躾されてきなよ!」

「ゆうちゃん…もう反抗期に入っちゃったのね…お母さん悲しい…」

「変なこと言うなー!」

「あははwww」





「なぁちゃん」

「!ゆうちゃん!」

「もう終わる?」

「はい!ちょうど終わったところです」

「じゃあ、帰ろ?」

「うん!ずんちゃん、どうする?一緒に帰る?」

「いえ!明日の仕込みだけしちゃいたいので!」

「そっか、じゃああんまり遅くならないうちに帰るんだよ?」

「はい!奈々さん、また明日!彩希さんも!」

「バイバイ、ずんちゃん」


同僚とお店に挨拶をし、2つの影は家路を急いで歩いて行った。