夢を見た


どんな夢だったか覚えているのは久しぶりだ


忘れたくなかった  本当は誰かに言いたかった


でも 妻には言うべきじゃないと思った


妻もずっと抱えている  普段は元気なふり


同じ境遇の誰かが 氷山 と言っていた


確かな表現だと今になって思う


普段感じる寂しさはほんの一角にすぎない


いつの間にか大部分を心のどこかに


押し込めたみたいだ


そうするしか生きていけないから


でも きっかけがあれば


すぐに姿を現して潰しにかかってくる


だから普段はきっかけに巡りあわないよう


意識的に いや 半ば反射的に避けるようにしている




夢の話


妻が息子の動画を見せてくれた


家族か誰かが持っていたものをもらったのか


いなくなる直前の あの頃の息子


朱色のTシャツに  ズボンはなんだったかな


テーブルにもたれ掛かったり 寝転んだり


はじめての映像に  驚いて また嬉しかった


でも  画面越しに元気な姿を目にしたら


無性に会いたくなって 話したくなって


夢なのに 会えるわけでもなくて


夢なのに 会えないと分かっていて


胸がぎゅーって締め付けられて


目から涙が止まらなくなって 


うわーって文字通り叫んだ




心が潰されそうで  起きた


起きてからも どうしても会いたい気持ちが抑えられなくて


でも妻には言えなくて


夜  次女が イチゴ狩りに行ったことを知らなくて


そのときの写真をみてみたいと言うから


どれくらいぶりだろう


パソコンに整理した家族の思い出の写真


イチゴ狩りと動物園に行った写真


二人で見ていた  途中から妻も後ろからみていた


久しぶりにみた息子の顔  表情


全部昨日のことみたいに 


あの頃に世界に引き戻された


画面から目を話すと錯覚が解けて


錯覚が解けると  もう二度と会えないとことを


突きつけられているようで


楽しそうに写る息子があんなことになるなんて


イチゴ狩りなんて  いなくなる20日前のこと



画面を閉じた



生きていたくなくなるんだ


君が生き甲斐だったんだよ


可愛くて仕方なかったんだ



また会いたいんだ


写真の君にしか会えない


君の夢をみるときは


決まって嬉しいけど


でも 決まって どうしようもなくなる



君に会うまでずっとこうさ


はやく会いたいなぁ


また一緒に  同じ時を生きたい