日本でLED(発光ダイオード)信号機が普及しにくい理由
―「優れた技術が世に受け入れられない理由」シリーズ 第8弾 -
大人の事情により受け入れられない優れた技術セクション(1)
今日から、「優れた技術が世に受け入れられない理由」シリーズの「大人の事情により受け入れられない優れた技術セクション」を開始します。
折角優れた技術があるのに、公的な利益よりも我欲を優先する大人たちの都合により、認められなかったり、潰されたりする事例を説明します。
○日本でLED(発光ダイオード)信号機が普及しにくい理由
信号機は大別して2種類あることを認識している人は多いと思われます。
1つの大きな丸い電球で青、黄、赤を発光させている信号機。10年くらい前まではほとんどの信号がこのタイプでした。
2つ目は最近増えてきた小さな点がいくつも集まっている青、黄、赤の信号機。
これが、LED(発光ダイオード)信号機なのです。
赤色と黄色のLEDは簡単に発明できたのですが、青色はなかなか発明できませんでした。
1990年頃には世界中の数千人あるいは数万人の優秀な研究者が血眼になって青色のLEDを開発していました。
研究人員、研究費も半端ではありませんでした。1組織で数十人、数十億円でも少ないと思えるような大人数、多額の研究費が投入されていたのです。
その苛酷な開発競争の勝者となったのは、四国にある全従業員数がわずか数百人の中小企業の数人の研究者だったのです。
研究に投入した費用も総額数億円でした。
リーダーの中村修二博士は一躍時の人になり、技術者のカリスマと言われるようになりました。
私は、中村修二博士と名刺交換したこともあり、何度か対談したこともあります。
十数年前に応用物理学会で中村博士が行った聴講内容を元に本コラム主題の内容を説明します。
中村博士が青色LEDを発明したおかげで、光の3原色(青、緑、赤)がそろいフルカラーのLED巨大ディスプレイが開発出来たり、信号機の青(実際は緑青)、黄、赤の全色がLEDで点灯可能になりました。
また、後に青色レーザーも開発出来、それによりブルーレイDVD、プレイステーション3も開発されたのです。
中村博士は講演で信号機への採用に関する裏話を説明しておられました。
LED信号機は、従来の電球タイプの物と比べて多数のメリットがあります。
省エネタイプで電気代が安い、寿命が十倍くらい長い、視認性が良い(見やすい)等です。
多数の長所があるのに、日本ではなかなか採用されなかったのです。
米国の方が先に普及しました。
その理由は、光源の寿命が長いことにより困る人がいるからなのです。
ここで問題です。 誰が困るかしばらく考えてみましょう・・・・・・・・・
↓
↓
↓
ヒント 電球の寿命が10倍くらい長くなることにより困る人がいるのです。
↓
↓
↓
解答編
電球の寿命が10倍になると電球を取り替える頻度が(十分の一くらいに)低下します。
年に1回交換しているのが、10年に1度に減るのです。
その結果、電球を取り替える人の仕事が10分の1に減るのです。
電球を取り替えている人たちは、採用決定権を持つお役人のお知り合い(先輩である場合が多い)なのです。
採用決定権を持っている人たちは、先輩の仕事を減らすような選択はできないのです。
それで、LED信号機は日本ではなかなか普及しないらしいのです。
一般に、米国では良いものが素直に世に認められ、素早く普及してゆくようです。
かつて、日米の戦争は日本の真珠湾攻撃により始まりました。日本が航空機の実力を歴史上初めて実証したのです。
米国はこの事実を重視し、空母、戦闘機の開発製造を強化しました。
戦艦として建造する予定であった船を途中から空母に作り替えた事例もあるほどです。
一方、日本は真珠湾の実績を軽視し、戦艦至上主義を変えることはなかったのです。
役に立たない巨大戦艦の建造に力を入れたのです。
軍上層部にとって豪華客船のような超ド級戦艦大和にはラムネの製造室まであったのです。
日本の戦艦至上主義は日露戦争での大勝が影響していると言われているのです。
英国のチャーチル首相は次のように言っている。
「過去にこだわるものは未来を失う」
過去にこだわり、周辺の利害関係を優先して良い物を認めない国が、素早く良い物を認めて採用する国に負けるのは仕方のないことではないでしょうか?
仮面ライダーで死神博士を演じた天本英世が、テレビで「日本人はぼけている。日本人には現在が無い。過去と未来しか無い。」と言われていたことを思い出しました。
「良い物を素直に受け入れる文化 = 一人一人が現在を尊重し精一杯充実した時間を過ごせる文化」と言ったところでしょうか?
お気軽にコメント、ペタ、メッセージ、読者登録をしてください。