実家での禁句は「MSC(まさし)」。


 僕の名前です。


 ヤマトが、両親が僕の名前を口にすると「今日、帰ってくるんだ」と思って、落ち着かなくなるそうなんです。


 だから、僕が実家に着く数分前まで僕の名前は出さずにおくそうなんですよ。


 いつも、狭い私道から公道に出る場所で父がヤマトを抱いて僕の車を待ってます。

 助手席の窓を開けて「ヤマト!」と声を出すと、驚いて興奮し始めるのです。

 僕の日々のなかの、数少ない至福の瞬間でもあります。



 今回は、父のタイミングが合わなかったのか、いつもの場所に父は立っていませんでした。


 僕の車が私道に入ったのと、父が数十メートル先に姿を見せたのは丁度同じぐらい。

 そして、ヤマトが走って来たんですよ!


 あぁ! あの子 僕の車の形か音まで覚えてるんだ目


 気をつけてドアを開けると、もうそこには尻尾をちぎれんばかりに振っているヤマトがいました。


 いや~。ゴム鞠のようにポンポンとこちらに向かって走ってくるヤマトの姿には、いたく感動しましたよ~。


 いつから覚えたんだろう…。

 毎回、仙台に帰る僕の車を、どんな気持ちで見てるんだろう…。