わたしを離さないで | ますやんのドラム日誌 

ますやんのドラム日誌 

Dr兼Voのますやんが、日々を綴ります

1月に博多のROCK BAR &GLAMに行き、マスター藤田さんから頂いた

映画50本を順次楽しんでいるのですが、その中にカズオ石黒作の「私を離さないで」

が入っていました。 恥ずかしながらノーベル文学賞を受賞され初めて石黒さんの存在

を知り、その作品にとても興味があったので、とても嬉しかったです。藤田さん、ありがとう!

日本でも綾瀬はるかを主演にテレビドラマ化されたらしく、それも見たいと思いましたが、

まずはこの本丸ともいうべき作品を鑑賞。

ストーリーは

臓器提供のために生まれた(作成された)若者たちの短い一生を淡々と切なく描いた作品。

小さな子供たちはある敷地内で日々の生活から学校までを過ごしている。

どこで生まれた、とか出生については描かれていません。おそらく、彼らはどこかの人間の細胞

から生まれたクローン人間なのだろう、、とここで想像させられます。

その敷地を出ると「魔物がいて殺される」と教えられているから、誰も出ていこうとしない。

その限られた中でも恋や友情も存在する。

しかし、ある年齢(12歳くらい?)になると先生から告げられる。

「あなたたちは、成人したら他人のために臓器を提供し、普通の人より短い人生となる」と。

なんの事かわからず、いや、ひょっとしたら、なんとなく感じていたのかもしれない、、

複雑な表情で聞き入る子供たち。その後、宿舎がバラ場rとなり3人の主人公は別々の

青春期を過ごす。そして、少しづつ生への希望を抱き始め、その「提供」が始まる前に

人間としての人生を意識し始める。。

最終的には、一人づつ「提供」がはじまり「終了」してゆく。そして、最後に残った女の子にも

「一か月後に提供」の通知が来て、この映画は終わります。

 

「逃げればいいじゃんか!」 「こんな世界はあり得ない」 なんて感想はアホの極致。

そんな感想しか浮かばない奴は観る必要なし!

彼らは自らの運命を受け入れ、それに静かに向かい、しかし、そこでの苦悩や悲しみにもがく。

そんな彼らの絶望とまた生への目覚め、しかしどうしようもない運命にそうっと寄り添うように

観なければこの映画を感じる事は出来ないでしょう。

 

最期、提供の前に「本当に愛し合っている二人と証明できれば、執行を遅らせてもらえる」

という噂を信じ、上記写真の右二人が必死に証明をしようとするも、しかし、結果として

それは単なる「噂」であり、執行時期は変えられないと知り、激しく絶望し、泣き上げる二人

に涙してしまいます。

かくも残酷な運命。当初はそれを半ば宿命として受け入れていた二人が愛が深まるにつれ

「生」を捕まえようとする。そして、彼女は、彼の最後の「提供手術」に立ち会い、そこで彼は

命を終了します。。

 

観終わって不思議な感情に心が支配されます。

それは、大きな悲しみでもなく、怒りでもなく、 やや ちょっと灰色がかったけど透明感のある

虚無感とでも言おうか。。難しいなあ、、

ただ絶望だけに満ちたような感覚ではないことは確かです。

 

この不思議な感動の正体を知るために、数回観なければなりません。

 

良い映画は何度でも観れますし、観たくなるのです。

 

良い映画です。