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star & flower

∞eighter∞



自分でも、声が震えてるのが分かる。
まともに顔が見られない。
けど。
これが最後なら。



今度はちゃんと顔を上げて言う。
「行かないで」




永遠に続くような気がする沈黙。


「なんで?」
困った顔してる。



「なんで今言うねん…決心、鈍るやん…」
(?)


「なぁ、俺のこと、どう思ってたん?」





言おうと思うけど、声がうまく出ない。




前に立ってまっすぐに見つめてくる。


「俺、もう行ってまうねんで?」






だめだ、涙出そう。





精一杯を、振り絞る。


「一緒に、いたい」





直後、ぎゅっ、と、包み込まれた。


「俺も…」





その温もりをもっと感じたくて、両腕で抱き締め返すと、私を包むその腕にまた力が加わる。





どちらからともなくそっと体を離すと、自然と笑みが溢れる。





離れられず、寄り添って、歩き出す。










もう、良いよね?













あの後、どうやって帰ったのかは記憶が定かじゃない。
喫茶店からも足が遠のいた。
偶然でも会うのが怖かった。


職場でも、仕事以外に関わることはしなかった。
相変わらず、顔を見ると声を掛けてはくれるけど、やっぱりどんな顔をしたら良いのかも分からなかったし、上手に笑える自信もなかった。




とうとうやってきてしまった、同じ空間で過ごす最後の日。
終業後、ざわつく飲食店内、職場のメンバーが集まる。


終始、笑顔でいるあの人を遠くから見ていることしかできない。
あの店で一緒に過ごしたことも、まるで夢のように思える。



会は終わり、それぞれが家路に着く。


「なぁ、帰るん?」


久々に間近で聞く声。
心臓がどきりとする。
気付けば、少し顔を赤らめて横を歩いていた。


「いつものとこ、行けへん?」
「酔っ払ってます?」
「ちょっとしか飲んでへんよ」



あの日以来、行けなかった喫茶店。
何度か店の前までは行った。
けど、姿が見えると入るのを止めた。


自分でも馬鹿だと思う。
けど、うまくできない。






いつものようにお茶を飲む。
何事もなかったかのような、他愛のない会話。


楽しい時間の過ぎるのは早くて。


お茶を飲み干し、店を出る。




店の外で、二人。
名残惜しくて歩き出せずにいる。



「ほな、また。」


『また』なんてないって、知ってる。
私の存在なんて、離れてしまえばすぐに忘れられる。



でも、まだ、一緒にいたい。



無意識に、袖を掴んでいた。





「行かないで」







息を切らして向かった、いつものとこ。
大好きな人が待っているかもしれない、大好きな喫茶店。
どう思われているかは関係なくて。


ドアをくぐれば、いつもの姿が見える。
妙な緊張感。




「ごめんなさっ…気付かなくて!」
「ええよ、あんま待ってへんし」
(そう言って、どれぐらい待ってくれてたんだろう?)
今さっききたわけではなさそうな痕跡が見える。


とりあえず飲み物を頼んで、腰を落ち着ける。
「仕事、終わったん?」
「あ、今日の分は、なんとか大丈夫です。」


…沈黙が少し気まずい。
飲み物が運ばれると、チラとこっちを見る。


「あの…どうしたんですか?」
待ち合わせなんてしたことがなかったから、何かがあったのだろうと思う。
(でも、どうして?)


ようやく、重い口を開いた。
「あんな…」