最大のライバルが救世主に | 咲花正弥 オフィシャルブログ 「Masaya Sakihana」 Powered by Ameba

最大のライバルが救世主に

このワールドカップ最終予選のラストマッチは、「まさかこんなことになるとは‼」と言葉を失う展開でした。

アメリカの対戦相手のパナマは、アメリカに勝てば、大陸間プレーオフ進出が決まるという状況。もちろんこれまでワールドカップに出場したことはなく、勝てばプレーオフですからこれは大一番。

いっぽうコスタリカでアウェーゲームのメキシコは、メキシコがコスタリカに負けて、パナマがアメリカに勝ってしまうと、1990年以来の予選敗退となってしまう状況。

全ての試合が同時にキックオフになりました。

前半パナマがアメリカを相手に先制します。スタジアムは凄い盛り上がり方!そしてその数分後、ピッチ上では何も起こっていないのに、スタンドはまた大盛り上がり。他会場で行なわれていたコスタリカとメキシコの試合で、コスタリカが先制した瞬間でした。

後半に入りアメリカはパナマに追いつきます。しかし後半37分頃パナマが追加点でリード!のこり7,8分ですからパナマの選手、コーチ、スタッフ、全国民が「これはプレーオフへの切符をとった」と確信したでしょう。しかもこの時点でメキシコは1-2とコスタリカにリードを許しており、このままではメキシコは予選敗退という状況でした。

アメリカ代表のアシスタントコーチと臨時ゴールキーパーコーチはメキシコ系アメリカ人です。自分達の試合が進行中でありながら、この状況でその2人が意気消沈しているのが見えました。メキシコの血が入っている人にとって、メキシコがワールドカップに出られないのは一大事なのです。

ピッチ上ではパナマ選手が「なんとか手加減してくれ」とアメリカ人選手に言ってきたそうです。でもこの日のアメリカは大半が通常は控え選手。彼らがワールドカップのチームに入るためにはアピールをする絶好の機会です。「俺もワールドカップに行きたいから手加減しないよ」と返したそうです。

ただパナマはその大観衆の応援に押されてしまったのか、それともこういった経験が少なく試合運びを知らなかったのか、なぜか全員で守備をするのではなく、まだまだ攻めようとしてきます。そうなると逆にアメリカのチャンスにもなってしまうわけです。

スタンドではこのまま勝てばピッチになだれ込むべく、多くのファンがフェンスによじ上っています。アメリカベンチには警備担当から、試合が終わったらピッチは危険になるので、終了の笛がなったら皆ひとつに固まってすみやかにロッカールームに戻るよう指示がありました。

そしてロスタイム1分24秒、アメリカ同点に追いつきます。スタジアムはシ~んとさっきまでのお祭り騒ぎがうそのように静まり返りました。パナマはドローではプレーオフに進出できないのです。そしてその数十秒後、アメリカ更に追加点で3-2と試合をひっくり返しました。そのゴールの後すぐに終了の笛が鳴りました。

この試合の流れはこのハイライトからどうぞ。

パナマには同情する部分もありますが、これがスポーツの世界。最後の最後まで選手は諦めずに戦う姿勢をアメリカは見せました。

この思いがけないエンディングは、思いがけない結果を生みました。コスタリカに負けた予選敗退同然のメキシコが大陸間プレーオフの切符を手にしたのでした。それは北中米カリブ海最大のライバルであるアメリカの劇的な逆転勝利によってもたらされたのでした。

メキシコ・コスタリカ戦、アメリカ・パナマ戦を同時中継したメキシコの放送局の映像がこれ。(画面中央にある動画をクリックして下さい)

画像は悪いですが、アメリカがロスタイムに同点に追いついたところで、"We Love you!!!"、とか"God bless America"などとメキシコ人アナウンサーが絶叫しているのが聞こえます。向こう数年間はメキシコファンもアメリカに頭が上がらないでしょう。

11月に大陸間プレーオフは行なわれます。まずはメキシコのホーム。それから数日後にニュージーランドで2戦目というもの凄い移動を伴うプレーオフです。メキシコはワールドカップに出場できるでしょうか?個人的にはなんだかんだいってメキシコは出場権を獲得すると思います。

うちのメキシコ系アメリカ人コーチ2人は、アメリカも逆転勝ちしてハッピー。メキシコもプレーオフ出場になってハッピー。試合後も笑顔笑顔でした。