金網の向こう側 | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 基本毎日更新をモットーにやってきましたが、今朝は魚市場に珍しい魚もなく、コンブ種苗生産業務はほぼ終了し、ワカメは巻き込みが終了して来月の末頃までは目だった動きもないと、ついに書くことが無くなってしまいました

 ( ̄□ ̄;)



 少年の頃(大分昔になってしまいましたが)の豊かな自然が溢れていた田老のことなどを書いてお茶を濁そうかと




 もう本当に嫌になった。今日も7.5㎞を走った後、神社の階段を20往復して体育館へ戻ったらクラブの時間が終わるまで筋トレだ。ボールすら触らせてもらえない

中学にはサッカー部がなかったのでバスケット部に入ったのだが、クラブが終わったらスポーツ少年団でサッカーをやっていることがバスケ部の先輩は面白くないらしく(まあ当然の話だ

「スポ小でサッカーをやっているヤツにはボールを触らせない。」

と宣言された

 隣を走っているカンチはサッカーのスポ小ではセンターフォワードで、足も速いし、勉強もできる。バスケットだって一番上手いのにサッカーをやっているというだけでボールも触らせて貰えない。どうみてもカンチより下手なヤツが体育館で先輩に丁寧に教えてもらっている間に、オレ達サッカー掛け持ち組は毎日ずっと走りっぱなしだ

「もう走るの止めよ。どっかで時間つぶしてクラブが終わる頃戻ればいいよ。」足を止めてカンチが言う。

 どうせオレ達が走っているかどうかは問題ではない。先輩にしたらオレ達サッカー少年団が体育館にいると目障りなだけだ

「でも、どこに行く?」カンチに聞くと

「オレのおじちゃんがこの前中学校の裏の沢でイワナを釣ったってよ」という。

イワナという言葉に痺れた。アユやヤマメは釣ったことがあるがイワナって今まで見たこともない。それが中学校の裏のチョロチョロの流れにいるということが信じられなかった。でもイワナってどうやって釣るのか解らない。2人ともイワナを見たことすらないのだから

山奥に家があるタケシなら知ってるかも

真面目に走り続けるタケシを捕まえて「イワナを釣ったことある?」と聞くと、あるという。どうやって釣るのと聞くと、「その辺の虫を針に付けて流してやれば釣れるよ」とそっけない。

オモリは?「付けても付けなくても良い」

糸の長さは?「どうでもいい

針は「なんでもいい」と全く要領を得ない。ただ「ウキは?」という質問にだけは「いらない」という明確な答えが返ってきた。

よく解らないから一緒に行こうとタケシを誘うと「先輩や先生に怒られるから嫌だ」という。もっともだ。でも、私とカンチは「イワナ」という魅惑的な言葉の響きに先輩や先生に怒られるとかいう心配は霧散していた。「よし、家に帰って竿を持ってこよう」と2人で家の方へ走り出した。

私の家もカンチの家も走るコースからさほど遠くない場所にあるので、クラブの練習で走っているようなふりをして行くことができる

小継ぎの渓流竿はジャージの袖に入れればばれることもない。竿をジャージの袖に隠し、テグスと針を尻のポケットにねじ込んでカンチの家へと走った

片方の腕だけがピンと伸びた妙な格好をした2人で、にやにやしながら川沿いの道を猛ダッシュで上流へと上っていった。

クラブの時間中は絶対に出ないスピードだ。なのに、全然疲れないのはどうしてだろう

舗装が途切れて砂利道となる頃にはチョロチョロだった沢の流れは徐々に力強いモノとなり、木立の間から時折見える落ち込みは青く透き通った水を湛えて何かがいそうな雰囲気を漂わせている。中学校からほんの数百メートルの距離に、こんなすごいところがあるなんて思ってもいなかった

ほどなくして砂利道が途切れた。

道の終わりはコンクリートで四方を囲まれた小さなダムが真ん中で仕切られているような場所で、人が立ち入らないよう周りを金網で張り巡らせてある。そこから上流からは一気に水量が増えているところを見ると、ここで取水しているようだ。

そこより上流に行こうとしても、水面のすぐ上まで木の枝が覆い被さり、川面に霧がうっすらと見えてなんだか怖い。熊でも出そうな雰囲気だ

                         つづく(かも)