予言 | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 平成21年の8月頃、隣町のイタコさんが9月に大津波が来ると予言して新聞沙汰になったことがある。イタコさんとはシャーマンのようなもので、亡くなった人の魂を自分の体に下ろして、亡くなった人の意志を伝える一種の超能力者のような人だ。恐山の「口寄せ」が有名だが、口寄せの他にこの辺の高齢者は良くないことが続いたりするとイタコさんに相談するから地域に1人ぐらいづつはいる。

田老では暑さが続いたり、スルメイカが大漁だったり、虫が大量発生したりすると、誰彼と無く「津波が来る前兆だ」と言い出すから、まあ1年のうち数回は「津波が来る」を聞くことになる。それにいちいち反応していたらずっと避難していなければならなくなってしまうので、皆聞き流すようになっているのだが、その時のイタコさんの話はまるで見てきたかのような具体的な内容だったので広い範囲で話題となり、新聞にも載る羽目にもなったのだ。

その頃は他の地域に行くと「おい、津波は来たか?」と冷やかされ、その度に「そんなの来ませんよ、誰が言ったんですかねえ」と頭をかいていたものだが、今にして思えば1年半のズレで的中させたと言えなくもない。普通の生活サイクルで考えれば1年半もズレたと言えるかも知れないが、千年に一度という大津波だったことを考えれば、たった1年半の誤差で的中させた。と言えるかもしれない。

 その頃、話を信じて船を高台に移した漁業者は他の漁業者にからかわれたものだが、あのとき、話を信じて高台に避難小屋でも準備して子供の成長を記録した写真やらビデオやらを保管していればなあ。と後になって思った。お金や物は後からでも何とかなるが、子供達の思い出の品々は取り返しが付かないから。

 ついでに言えば「家財の保険に入っておいた方が良い」という保険屋の話を聞いていればなあとも思った。まあ、地震保険には友人から半ば強制的に加入させられたので、家が無くなってローンだけが残るという最悪の状態にならずにすんだのが不幸中の幸いではある。